第3話 段ボールの子ども

「昨日から雨も降ってねぇから、久し振りに路面も乾いてくれて助かるわ。昼から暑くなるらしいし、さっさと巡回終わらせてぇな…」

ある梅雨の中休みのような曇り空の午前、小さな町の派出所で勤務している、いわゆる「お巡りさん」の俺は日々の任務であるスクーターでの町内パトロールを淡々とこなしていた。

市内でも治安の良い地域として、不動産屋のサイトでも一押しのこの町では、事件など早々滅多に怒らない。住宅街の間を抜ける細い道路で信号待ちをしている俺の脳内は、今日の昼飯のメニューで持ちきりだった。


「…エーン。」

ん?道路沿いの山を切り開いた法面から泣き声らしき声が聞こえた。

「捨て猫かな?エーンなんて、仔猫は鳴くんだろうか」

さほど気にも留めず、対向車にながらスマホがいないかをチェックしつつ赤信号を見つめていると、

「出してー。イヤー。」

いやいやいや、流石に猫が「出してー」なんて言う訳が無いだろ!

急いでスクーターを路肩に停め、俺は一気に法面ん駆け上った。辺りを見回すと、ガムテープで蓋のされた1箱の段ボールが置かれていた。

「ママー。ママー。」

俺は、段ボールに飛びつくように急いで必死で蓋を開けた。そこには、薄汚れたTシャツにオムツ姿の小さな子どもの姿があった。

「うわぁぁぁ!」

思わず叫び声を挙げてしまったが、俺は警察官だ。この子どもを保護し、安全を確保する義務がある。外傷や目立った衰弱は認められなかったので、無線で応援のパトカーを至急要請した。



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