第2話 ミケ
私、新米お手伝いペットのミケ。名前の通り、三毛猫で歳は2歳。第1話は何だか堅苦しい内容だったけど、ここはミケの自己紹介みたいなものだから気楽に読んで欲しいニャ。
ミケ達の住んでる少し未来の日本では、「お手伝いペット」が人間のお役に立てるように頑張ってる…ってことは何となく分かって貰えてると思うんだけど、そもそも普通の犬や猫がどうやって「お手伝いペット」になれるのかをまずは説明するニャ。あ、申し訳ないけどミケは猫だからワンちゃん達のお勉強の様子を実は知らないニャ。まあ、たぶん猫の場合とそんなに変わらないと思う…ってことでご了承願いますニャ。
ミケのお母さんも実はお手伝い猫で、仔猫の頃から「お前達、1歳のお誕生日が来たらお手伝い学校に入学するんだよ。人間のお手伝いは大変なこともあるけど、母さんはこのお仕事が大好きだし、お仕事があるからお前達のご飯も住むところも何も心配せずに暮らせるんだから。」ときょうだい全員言い聞かされて育ったニャ。
待ちに待った1歳のお誕生日の日、ミケは「お手伝い学校(猫専用)」に入学したニャ。全寮制だからお母さんと離れるのは寂しかったけど、きょうだいも他の同い年の猫達もたくさんいたから、すぐに元気を取り戻せたニャ。
(本当は、学校で出された入学祝い代わりの高級キャットフード尽くしの給食を食べたからだけど、そこは内緒ニャ)
「お手伝い学校」はその名の通り、お手伝いペットを育成するための学校で、人間の言葉を覚えるのはもちろん、育児や介護のお手伝いが出来るように丸1年かけて、毎日色々なお勉強をするニャ。難しいことは分からないけど、偉い先生が考えた練習のおかげでお手伝いペット達は人間と同じ言葉を話せるようになるし、文字もスーパーの広告レベルなら読み書きが出来るニャ。
あと、人間と同じように二足歩行も出来るように練習するニャ。
(四足歩行の方がもちろん速いんだけど、人間とお手々を繋いだり、衛生面からも二足歩行の方が好ましいから頑張ってたっちしてるニャ。ちなみに、お手伝いペット用の靴もちゃんと売ってるニャ)
ミケ達はお勉強を頑張る代わりに、ご飯も寝床も保証されるし、少しだけど毎月お小遣いも貰えるしお盆やお正月休みには、みんなでバスや電車で旅行にも行けるニャ。
ちなみに、お手伝いペットは最新のAIや安全運転装置がふんだんに搭載された専用の車も運転できる(もちろん運転免許も持ってるニャ)から、園や病院の送迎、お買い物もお任せニャ。
(ミケ達の世界では、お手伝いペットを普及させないと日本という国自体がいずれ消滅してしまう…って偉い人達が頑張ったおかげで、動物アレルギーを抑える方法やお薬も色々開発されて、人間と動物が今よりもたくさん触れ合える世の中になってるニャ。だから、回転寿司店にもおしゃれなパンケーキカフェにもミケ達は行けるニャ)
ミケ達も人間と一緒で一匹ずつ個性があるから、1年かけて赤ちゃんをお風呂に入れたり、お年寄りのオムツを替えたり、泣いてるこどもをあやしながら洗濯物を干したり…なんて、人間がお家で毎日頑張っているようなことを何種類も練習して、「どんなお手伝いが向いているか」をお手伝い学校の先生達と一緒に見つけるのニャ。
ちなみに、ミケは
「性格は満点だけど、あとは普通。泣いている赤ちゃんをあやす時の顔が怖くて余計に泣かせちゃうから1歳以下のこどもがいる家庭はNG」
という、微妙な評価を頂いたニャ…
そうそう、家事や育児のスキルだけじゃなくて「赤ちゃんに尻尾を引っ張られても攻撃しない練習」なんかもあって、ミケはヒゲを触られても我慢するのが一番キツかったニャ。
そして、1年のお勉強が修了したら卒業試験を受けて、無事に合格すれば晴れて「お手伝いペット」デビューにゃ。ちなみに、ミケの同級生にもお勉強が苦手な猫はもちろんいたけど、卒業パーティーで出される「超」高級キャットフードのフルコース目当てでみんな猛勉強の末に合格を掴み取ったニャ。
ミケも卒業後すぐに、スポット(数時間のお手伝い)でこどもやお年寄りのいるお家のお手伝いを幾つか任されて、毎日忙しく過ごしていたニャ。
少しずつだけどお手伝いペットの仕事にも慣れてきて、休日はお友達のミーちゃんと一緒に、動物専用スーパー銭湯で岩盤浴とマッサージチェアでリフレッシュ…の後は猫アパート(お手伝いペット専用で、家具付きニャ)でビールで乾杯する楽しみも見つかった頃、お手伝いペット派遣会社の社長さんから
「あ、ミケさん?いつもありがとうね。ミケさん、前に住み込みの仕事でも構わない…って言ってたよね?」
と一本の電話がかかってきたニャ。
「こちらこそ、いつもお世話になってます。はい、住み込みのお仕事もやってみたいかな…って。」
電話口から顔は見えないけど、たぶん社長さんはすごく安心した表情で
「よーかったー!!悪いんだけど、急募の話が来てさぁ、2歳ぐらい?のお子さんがいるお家らしいんだけど住み込み希望なんだわ。明日10時に一度話聞きに行ってくんない?」
と一息で話したニャ。
「大丈夫です。家族構成とかスマホ(お手伝いペットはGPS内蔵バンド&専用スマホ必携ニャ)にメール送って貰えますか?」
と尋ねると、何だか気まずそうに
「あ〜…明日、ご家族と直接お話して貰ったらいいから。僕も電話でしか話してないけど、気さくそうな人だったよ。緊急連絡先と家までのナビはすぐ送るからよろしく〜。」
と電話を切られてしまったニャ。
住み込み希望の割には事前情報が少ないことと、社長さんの様子が気にはなったけど、
「まあ、住み込みの方が早くお金貯まるしとりあえず明日行ってみるニャ〜」
と思うことにした5秒後、眠りについたニャ。
この時は、まさかニュースに出たような子のお世話をすることになるなんて、夢にも思わなかったニャ。
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