坊っちゃんとミケの他愛もないけど幸せな日常

焼き海苔大好き

第1話 一家に一匹お手伝いペット

ここは、少し未来の日本。虐待やネグレクトで尊い子ども達の生命が脅かされる事態がうんざりするほど繰り返されたことを鑑み、ようやく法改正の動きが本格的に始まった。

不幸な子どもをこれ以上生み出さないために大切なことは、必ずしも「生みの親の下で育つこと」ではなく、「子どもの養育に適した人物・環境の下で育つこと」だという思想が漸く法的にも認められ、被虐待児の迅速な保護、里親及び養子縁組制度の拡充が実現し、多様な家族の形が認められ始めた。

しかし、同時に「人口減少に歯止めがかからない日本で、子育てや介護にこれ以上人の手を割くことは不可能」であった。労働人口を補う目的での外国からの移民受け入れも、当初の予想に反しその数は順調に増えず、「人手が足りませんので子育ても介護も自分達の家庭内でやりくりして下さい。もちろん仕事は続けて納税して下さい、なんて何の罰ゲームだよ。」

と結婚を諦める若者は増える一方。

この苦境の打開策として発表されたのが、「お手伝いペット育成計画」である。盲導犬をはじめとする、動物が人間を手助けするための訓練や制度は以前からあるが、この計画は全く次元が異なる。

長年、極限られた人間のみで密かに推進されてきた研究により開発された訓練を受けさせることで、犬や猫という元来、ペットとして飼われていた動物達が人間にも引けを取らない知能や精神、運動能力を手に入れることが可能となった。

そして、訓練を終えた「お手伝いペット」は人間からの要望に応じて契約を結び、人間の手助けを行う。もちろん、報酬は発生するが、そこは政府の介入もあり、生身の人間に比べ破格である。そのため、この制度は爆発的に普及し、今では巷でお手伝いペットを見かけない日は無い、と言っても過言では無く、「一家に一匹お手伝いペット」という言葉がぴったりだ。

また、野良犬・猫がほぼ根絶するというメリットも生まれた。

前置きがかなり長くなったが、この話はある一匹のお手伝いペット「ミケ」が出会う、家族との日常を綴った物語である。ミケには、次話より登場してもらうが、今日はここまで。

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