第23話「美富家との再会①」
三人で途中の寂れた小屋の所まで馬車を借りて進み――――
「シャインさん。ここで留守を頼む」
「判りました。道中お気を付けて」
確認した所――――誰も使われていない小屋だった。
さらに室内の一画のそこには隠れ場所があった。
「ごほっ・・・ここらはホコリだらけだな・・・」
「みたいね。私の魔法で一回綺麗にしていい?」
シャインさんはそう言って洗浄の魔法を使い始めた。
その間、俺は周囲を見渡す。
「アインさん。こういう所って盗賊居たりするもん?」
【そうですね、ただ、盗賊は地上での活動を控える間は洞窟かこういった小屋に地下を作ったりとかの才能は有りますね】
才能に埋もれた結果――――
「見向きもされずに結局、犯罪を起こす側になっちゃうのがなぁ~」
【まぁ、それも含めて過去にはそれを考え、最善の行動をとった来訪者様も居ますし】
取り敢えず・・・
事前にやっておく事がある。
「詩、そっちの家族に念話で先に事情を話せれたり出来る?」
「出来るわ」
その小屋から出た後――――アインさんに頼んで隠蔽魔法や強制転移する罠の魔法の設置をして貰ってから馬車に戻り、直ぐに目的地に直行する。
その間に詩は家族に念話で連絡を取っている。
「――――おっけ、出来た。お父さんが門番して待ってるだって」
「よし、さっさと行くか」
馬車での移動中――――
詩に声を掛けられた。
「そう言えば、シャインさんの向こうでの名前って何?」
「あ~、何だっけ?アインさん」
アインさんが御者台に座ってる俺の隣に現れる。
「シャインさんの向こうでの名前提示はテスター様の管轄なので私の一存では表示できません。申し訳ありません」
「いや、良いさ。直接本人に聞くしかない」
俺がそう言うと、詩は何度も頷く。
「それより・・・今の魔族が住む場所は村になってるのか?」
「うん、お父さんの弟にあたる叔父さんが建築家で前に言ったコンサートのも叔父さんに頼んだんだ」
詩の叔父にあたる人から建築を学んだらしく、詩のお父さんは村長さんに気に入られているらしい。
「前の戦争で多くの魔族が亡くなった原因も自分達が仕えていた王族の決定ってのもびっくりしたよ」
「詩が住んでいるその村の村長、結構いい魔族なんだな」
詩は俺と同じ知的障害者の一人だが・・・それも軽度の方。
故に苦手な事である"考える"より動く、または動かす方を好む人だ。
「ここを真っ直ぐ?アインさん」
「真っ直ぐです」
因みに俺は普段は考える事はしないが・・・冷静になる時だけ的確な場面を考える事が得意だ。
「そこの三本道を右ですね」
「よっと」
馬車を巧みに扱う。
「後数メートル先ですね」
「よし、もう少し頑張ってくれよ」
俺がそう馬に行って撫でると、馬は何か理解したのか、「任せろ」と言っているように蹄を
「取り敢えず酔い止めに魔法掛けるね」
「お願い」
アインさんは直ぐに俺の腰にある魔導本用の革袋に戻る。
普段、乗り物利用の際にこうして
「さてさて、もうそろそろだよ」
「もう?やっとだ~!」
詩が居る馬車の中でガサゴソと音が出ていた。
「何やってんだ?」
「えっ?あぁ、着替え。念の為に異空間庫に仕舞ってるの」
うっわ、便利なヤツ持ってんだ
「一旦、窓開けて良い?」
「大丈夫。後その窓スライドになってるよ」
少し大きめのこの車体は精々前後で合わせて6人まで乗れるタイプである。
詩は窓ガラスをスライドさせ、空気を入れ始めた。
「あ~、空気が美味しい~」
「だな」
どうやら室内に冷房は無いらしい。
「大丈夫か?暑くないか?」
「暑い」
後で冷房を設置してみるか
「判った。後でこの馬車改造しておくよ」
「おねが~・・・」
一瞬で詩は驚く。
「ん?・・・んんん????」
「どーした?」
詩が少し身を乗り出す。
「いつの間にそんな技術生み出せるの?」
「あ~、その事か」
すると、一瞬だけ強めの風が吹き出した。
「風強くない?」
「この子が一生懸命走ってるからな」
俺はそう言ってまた馬を撫でる。
魔族の居る村とされる塀が見えた。
「見えた?」
詩は準備をし始めた
「あぁ、もうそろそろ着く」
そう言って手綱をしっかり握って門の近くまで行く事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます