第24話「美富家との再会②」
今俺は――――魔族の代表である村長と対面していた。
一人で。
「さて、話をしようか」
「よろしくお願いします」
この場で話す事になるのは、村に着いた後だった。
「俺、ここで待ってるから先に行ってきな」
「判った!しっかりと説明するね!」
詩はそのまま入り口まで行き、門番に話しかけ始めた。
「(門番って普通二人か三人態勢じゃなかったか・・・?しかも門前で待っているらしい事を聞いたが・・・)」
親しげに話している魔族は・・・誰だ???
あっ、戻って来た。
「さっきの門番は誰だ?」
「村長の息子さん。あの人真面目でその場の物事の判断をはっきりとして賢いんだよ」
親しげに話しかけていた相手は今世では近所に住む幼馴染だそうだ。
「おーい!おじさん連れて来たぞ~!」
「あっ、こっちこっち~!」
響輝さんは俺を見て驚く。
「まさか、信幸君かい?!久しぶりじゃないか!」
「お久しぶりです!響輝さん!」
響輝さんは元々、音楽塾の講師をしていた時期があった。
親から無理矢理勧められて通う事になったが・・・響輝さんの教えが結構分かり易く、経った一ヶ月で楽器の扱いが周囲よりズバ抜けていた。
「知り合い?」
「うん、私の元の世界の友人。お父さんやお母さんやお姉ちゃんが挙って褒める程音楽に才能あるんだよ」
なんかめっちゃ褒めてくるじゃんか
「ノブユキだ。親しい人からは"ノブ"って言われてるんだ」
「よろしくな、ノブ。俺はグリムってんだ」
男同士の
「もしかして・・・人間が好きか?」
「なんでわかった?!お前さんもか?」
肩を組んで小声で話し込む。
「俺、来訪者だから恋愛とかした事ねぇのよ。恋するとなんかこう・・・何かが変わる感じなのか?」
「あぁ、直感的に"好きだ"って感じるらしいぞ?」
余所で二人が苦笑いする。
「も~、ノブ君!今回目的があってこっちに来たんでしょ!」
「あっ、っとゴメンゴメン」
「若いっていいねぇ~」
早速、出会ったばかりの魔族の次期村長のグリムに案内して貰う事になった。
「あっ、そうだ。今回の件お父さん達にも来てもらう必要があるんだった!」
「そうなのか?」
響輝さんと詩が奏さん達を連れて来る間――――
目的地に着いた。
「戦争の事でてっきり俺みたいな来訪者側に対して嫌悪してるのかと思ったけどそうでもないのか?」
「今まではな。でも、親父が魔王国の宰相補佐だった頃から考えは大分変って来てるよ。現に戦争後の魔族は殆ど生死不明って周囲の国々では噂されてるけど」
確かにそんな話がちらほら聞く。
「それにまだ今代の魔王様はまだピンピンしてるぜ?戦争はするもんじゃ無いって宣言してから訓練に参加してるけど」
「すげー生情報。やっぱ時代も人の考えも変わるもんだな」
なんかそう思えると、思わず納得する。
「ま~亡くなった魔族の方が多いのは事実だな。なんせ、亡くなったのが支配領土云々言ってる連中だったし」
「マジか」
それ以外の魔族は戦争に反対だったのか・・・
「良かったよ。俺がこの世界に転移して来たタイミングでまた罵声を浴びる事になるかと思った」
「魔族は基本的にフレンドリーだからな」
神々でさえも知らない魔族の一面ありそうだ
「着いた。ここが集会所。ここで親父が待ってるから行きな」
「おう。道案内助かるよ」
俺はそう言ってそのままその建物に入る。
「ふむ、お前さんが今代の来訪者か」
「どうも、佐久間信幸です。よろしく」
室内が畳になっていたので、玄関先で靴を脱いでそのまま草履に履き替える。
「ほう、やはりこの室内でのしきたりは知っているか」
「勿論」
奥の方に通された後、正面で話し合いの態勢に直した。
そして冒頭に戻る―――――――。
「―――で、お前さんがここに来た理由を知りたい。アイツの倅を連れて来た以外にも理由はあるんだろ?」
「えぇ、ご子息からも人通り魔族の皆さんに関して聞いたので。後は――――」
来訪者の条件を話す。
「・・・成程ねェ~、で。ブラストら家族がこの世界に何か訳ありで来たんじゃねぇかってのがお前さんの考えか?」
「ご明察です。で、その情報を知る為に・・・あとあの人達の事についてを魔族の皆さんが信仰なさっている神様になら何か情報を持っているのではないか・・・と」
村長さんは少し黙り、数十秒後――――
「うむ、だったらブラストらを連れて行ってくれ。それで何か判るのであれば彼らのこの村で現れた理由が分かるやもしれん」
「魔族ってその場で突然現れるようなもんですか?」
そう聞き返す。
村長は頷く。
「歴代魔王様の中でも初代様は元は人間であると聞いている。だが、そんな魔王様は・・・強き者のみを配下に置くのが良しとされていたんだ」
「成程、つまり―――――」
美富家がこの世界に来たのは魔族の誕生の原理が関係しているかもしれない・・・
「・・・そろそろ、私達魔族のような同族も国で過ごすよりこの村で住む方が暮らしは落ち着く」
「・・・そうですか」
一度、魔族の国を再建して魔族を集めてイチからまた生活して貰おうかと思ったけど・・・
「(案外、そうじゃないんだな)」
「・・・さて、しんみりするのもなんだ。今日はこの村に泊まるかい?」
俺は少し考える。
「実は・・・聖女をここから先の賊の使用済みの隠れ家で待たせてるんで誰か一人と一緒にこちらに泊まらせたいんだが・・・」
「構わんよ。なんなら、ウチの息子を連れて行くと良い」
よし、決まりだな
「じゃ~あんたの息子さんを連れ回させて貰うよ」
「あぁ」
お互いに握手をしてそのままその場を後にする。
「おーい!話は終わったか?」
「あぁ、後で知り合いを回収したい。手伝ってくれ」
手伝いをしていたらしいグリムが俺の所に来た。
彼は頷き
「判った。場所は?」
「場所は―――――」
地図で場所の確認を済ませ、さっさと準備に取り掛かる。
「どっか行くの?」
「一旦シャインさんを回収しにあの場所に向かう!詩は先生らと待っててくれ!」
馬車に乗り、直ぐに出発した。
「―――へ~、やっぱ君にもサポートしてくれるヤツは居るんだ?」
「あぁ、ただ契約上になるんだが・・・」
俺はアインさん含む神々から貰い受ける"サポーター"について説明をする。
「先ず、俺みたいな来訪者以外には会話は聞こえないし姿も見えない」
「成程成程、来訪者の専属だから来訪者以外の人からは話しかけても意味無いか」
中々常識ありそうなヤツだ。
「もう少し先辺りに待たせてる」
「おっ、あそこらへんか」
そろそろ、到着する――――。
訳アリ転移者の異世界冒険譚 ユウタ @yuuta10116
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