第一章【魔族編】

第21話「新たな旅を①~依頼人は魔族でした~」

とある日の早朝にて――――


「何故魔族と敵対していたか、その理由は分りますか?」

「表向きは政治に関しての統治の為の戦争だろ?んで、実際には裏では植民地支配による奴隷補充の為の戦争・・・だっけか?」


千年も経ってやっと魔族対来訪者による戦争は終結した。


それが国民による現在の認識である。


「戦争に負けた魔族は来訪者の采配により国同士による和平条約が結ばれたそうです」

「それが締結するまで500年程続いたんだよな?んで、残りの500年の間は締結しても他の国からの暗殺者とか送り込まれて人間同士の戦争が起きたりと」


欲深い人間は幾らでもいる。


「んで、そんな魔族は今でも力のない人間からの襲撃を恐れているんだったか」

「えぇ、今回の依頼主は共和国で身を潜めているそうです」


そう、今回は魔族からの直々の依頼である。

来訪者限定の特別な依頼になっている。


「ギルドもしっかりと情報を守ってて偉いね~」

「ですね~」


目的地へ行く道中にて、休憩しつつ馬車で移動していた。


「ラッガ共和国に魔族に嫌悪する人居たりは?」

「いえ、基本的に話をすれば理解するような国です。なので魔族とは和解している筈ですよ」


「ですが・・・」と彼女は続ける。


「共和国に来てまで人間以外の種族を嫌悪して嫌がらせ行為をするような輩は居ますね」

「解決しなさそうな状態じゃん、怖っ」


ただ、結局のところ、嫌がらせ行為をした冒険者は出入り禁止になり、各国の冒険者ギルドではその冒険者の違反行為等を知らせる連絡とデータが送られるらしい。


「そう言った冒険者は結局のところ、依頼斡旋不可、パーティー編成加入不可など様々な罰則が科されて謹慎処分か冒険者身分剥奪・・・貴族の冒険者の場合は国王陛下からの通知が来た時点で全ての身分が剥奪されると言う事も」

「因みに剥奪された冒険者の場合は生活が厳しいのか?」


そう聞くと、シャインさんは頷く。


「私が言うのもなんですが・・・領主が管理していない村なんかも無理だと思いますよ」

「成程」


シャインさん曰く、罪を犯し更には命の危険を脅かした貴族冒険者は身分全て剥奪された後、国外追放されたのちに全ての国に指名手配までもされて見つかった時点で追剥の様に追いかけ回されるらしい。


「村でも差別されるので自害以外は救いがない・・・と言うものですね。文献で見た限りだと」

「じゃ~厳しいって訳だな」


ラッガ共和国、様々な種族が住み着いた異種国家である。


「この国にご入国する際には身分証提出を!」

「おっ、門番してる!」


他の国では比較的マトモである。

じゃあ共和国の場合は・・・・?


「この国へは何をしに?」

「そーだな~先ずは観光だろ?後はダンジョン。あとは~」


俺は指を鳴らす


「住んでる所のギルドマスターの顔見知りがここに居るって聞いて」

「ほう、え~っと・・・成程、確認を取って来るので彼方でお待ち下さい」


休憩所で暫くして――――


「や~、お待たせお待たせ~」

「どうも」


やせ細った感じのイケメンが出て来た。


「ブルーズ・ネイビィって言いますん。よろしくね~」

「来訪者のノブユキです。此方こそよろしく」


挨拶を済ませて早速、本題に入る。


「件の依頼ね。ウチで保護してる魔族の女の子を故郷に送って欲しいんだ」

「って事は・・・その帰る場所、やっと目途が経ったんですか?」


シャインさんがそう聞くと、ブルーズさんは頷く。


「この依頼は来訪者様とその御一行様でなければ暫くの間はこの国に留まるしかないんですよね」

「あ~、それだったらこの国に来て正解だったな」


依頼主はギルドが管理している屋敷に保護をしているらしい。

その場所を教えて貰ったので、行く事にした。


「さてさて、どんな人かな~」


目的地の屋敷に着き、職員が屋敷内の近くに居た職員に話しかけた。


「おっ、来たのか。判った。念話で話を通しておくよ。暫くそこのテラスで待たせてくれ」

「判った。皆さん、こちらへ」


テラスで暫く待っていると――――


「皆さん、お待たせいたしました。ご依頼人が会いたいと仰っているので、中にお入り下さい」

「判った。皆、行こうか」


俺がそう言うと、周囲のメンバー全員頷いた。


「いったいどんな魔族っすかね?」

「ほとんどの魔族は独立して別大陸で国を興したと聞きます。多分、今回の依頼人はその国の中にある村に帰りたいのでしょう。共和国の騎士団が目を光らせていますが・・・・」


どうなる事かは不明・・・・とはこの事だろう。


「パールさん、今回は依頼人を護るのも仕事の内になる。大丈夫か?」

「大丈夫です、ご主人様。後、私の事はどうか呼び捨てに」


うーん、その方が良いのか


「・・・判った。メラミア、お前はシャインさんと後でギルドに連絡を頼む」

「了解っす」

「任せて下さい」


因みにミューズさんは仕事が片付き次第に共和国に転移してくるそうだ。


「さてさて」


部屋の前に職員が止まる。


「フォルテ嬢、件の方々をお連れした」

『どうぞ、中にお入り下さい』


まさかの人物だった―――――。

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