第20話「帰国の序に登城」

運命が少しずつ動く前日―――


「え?城に呼ばれてる?あの人が俺に?」

「えぇ、多分聖女様を救ったお礼だと思いますよ」


救世国の間者を送ったらしく、依頼の達成と俺の事について情報が国王の下に届いたらしい。


帰って来てから次の日―――今日、受けたい依頼もなかなか見つからない時にミューズさんからの食事の誘いで・・・と言う運びで今、食事を終えている。


「成程」

「それで・・・聖女様は今、どちらに?」


あ、そうだ。

伝えておかなきゃ


「自分と同じ冒険者ギルド所属ここになります。んで、今現在の彼女なんだけど~今、ミューズさんが遅めの出勤になる前に既に試験を」

「入門テストですね、判りました。大体理解出来ました」


ミューズさんは墓参りを朝に行っていた為、不在だった。

当の本人は元は彼氏さんが居たそうだ。

だが、まだ10代の前半だった頃――――年上の彼氏さんが

依頼の最中に事故に遭い、巻き込まれて亡くなったそうだ。

命日ではない日でもその彼氏さんの墓参りは必ずギルドマスターが週に一度か二度は許可してくれるそうだ。


「主様~二人共合格っす~!」

「おっ、良かったじゃん」


とりあえず・・・・


「――――って事で国王に帰還の挨拶とか君らの紹介もしておきたいんだ」

「主様の為とあれば同行します」

「も~、大げさよパール。判りました。直ぐに挨拶に伺いましょう」


うんうん、主人を守る為ならば行動するのは良い事だ。


「でもまぁ~命令無しで動く事は少なさそうだな~」

「あ~、ありますね。他の命令が来るまでずっと私のガードをしてたり」


やっぱそうなるんだ


「お母様からは『シャインわたしの命令は絶対だ』と言う事で私が命令を出さないとトイレにすら一切行かなくて」

「いや、催しの時は命令じゃなくても自分の意志で行こうよ」


思わず口に出してしまった。


「私は――――」

「あー、ハイハイ。一旦黙ろうか」


同じ言葉を繰り返すしかしないなこの人は


「!!!!」

「・・・ん?」


呆れた言葉しか口に出していない筈――――


「・・・あっ」

【また、やっちゃいましたね】


俺の言葉には圧が乗ってしまったらしい。

パールさんは冷や汗垂らしながら片膝を着いて黙っていた


「あー、ウン。ごめん、言い過ぎた」

「いえいえ、私の方こそ申し訳ありません。パールには命令関係無しに動く様にとしっかりと言うので・・・・!」


シャインさんは俺に対して相当焦っていた。


「・・・も」

「「「「も?」」」」


パールさんが黙って数秒後――――


「申し訳ありませんでした」

「(泣きながら漏らしたままで謝罪してる~~~?!)」


ワーワーと賑わいありつつ――――


「さてさて、到着~」

「私が先に騎士の方々に挨拶して来ますね」


シャインさんはそう言ってメラミアと一緒に門番へ挨拶をしに行った。

このバルハイル国の騎士団は暫くして団長さんに新人含めて元々厳しめの訓練が・・・例の一件により、元より数十倍以上訓練が厳しくなったそうだ。

新しく入って来た新人騎士は泣きべそ掻きつつ必死に騎士団の訓練に付いて行っているそうだ。


「直ぐに国王陛下に謁見できるそうです!」

「判った!・・・それじゃ行こうか。パールさん」

「畏まりました。ご主人様」


さっきまでとは打って変わってパールさんの性格は見事にガラッと変わった。

・・・・俺の圧が原因で。


「(案外・・・Mっ気があるかもしれないな)」

「何でしょうか?」


黙ってみていたのを気付かれた。


「いや、なんでもないさ」

「・・・?はぁ。」


相変わらず身体の主張と相反して全身清楚な白装束姿。

それが彼女の暗殺者としての格好らしい。

一方でメラミアは身体控え目で露出がほぼ多めだが暗殺者としての正装ではあるらしい。

・・・一応な話である。


―――――――――――――――――――――


「・・・なんか、イラっとするような視線感じたっす」

「あらら」


―――――――――――――――――――――


謁見の間にて―――――


「御久しゅう御座います。バルハイル国王陛下」

「其方こそ、久しいな。教皇は息災だったか?」


他愛ない会話が続き――――暫くして。


俺は救世国での事で話を進めた。

手紙にも一応書いていた為、国王陛下は真実と知ると口元を手で押さえて驚いていた。


「いやはや。宰相以外の臣下達を下がらせて正解だった。まさか、聖女本人が初代の王妃であった来訪者様と同じとは・・・」

「この世界での来訪者は必ず体内外のどこかに欠損、欠如している事が前提は間違いないのは事実。そしてそれら来訪者は何れ世代ごと、同様に転移している事が肝です。だけど、そういう理を外れている来訪者は――――いずれも転生している事が前提と」


俺のその言葉に国王陛下は納得し何度も頷いた。


「我々は何もせず、お二人を陰ながらに応援させて頂く」

「有難い。是非」


取り敢えず、転移して帰宅する。


「じゃ~取り敢えずこの場で解散で。まだ時間あるし、二人はミューズさん所で依頼を受けながら冒険者ランク上げてみたらどう?」

「判りました。我が主の命、私がお守り致します」

「大げさだってば~」


パールは謁見の後も俺に対して低姿勢を続けている。


「褒美とかやったりしないのか?」

「あ~、一応していますよ。ただ、私以外にも動いてくれたら良かったんですが」


パールはシャインさんが話をしている間にもモジモジしていた。


「成程ね~、暫く御預けか」

「です」


まぁ、撫でるぐらいは良いか


「!!!!!!!」

「まっ、今回はこんなもんで良いだろ」


後日、シャインさんの周囲は平穏が続いていたと言う。

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