第19話「聖女の大復活と教皇の微過保護」

「・・・・こ、こは――――」

「・・・!」


大聖女と呼ばれる―――可憐な美女が目を覚ました。


「聖女様が・・・シャイン様が目を覚まされたぞ~!!!!」

「国民と村民たちに一報を!今すぐに!」

「判りました!!!」


聖女が目覚めた事で救世国は国内外問わず騒がしくも賑わいを取り戻した。


「良かった・・・、ほんっとうに・・・よがったぁ~!!!」

「おっ、お母様っ」


シャインさんはあわあわしながら自分の母親を落ち着かせた。


「・・・・」

「どうしたっす?」


この違和感・・・


「(まさかとは思うんだけど・・・)」

【お気付きになりましたか?】


おかしいと思うんだ。

流石にアインさんも気付いているし


「教皇猊下、一旦全員下がらせて貰って良いですか?そちらのお嬢シャインさんに確認したい事があるので」

「・・・うむ、私も下がるとしよう。お前達、警備を頼む。我々はこの場を離れるぞ」


周囲に居た人達は頷いてその場を離れた。


「メラミア、前にも聞いたけど・・・来訪者の法則は覚えてる?」

「勿論っす!」

「?」


とある結論を出す前に―――


「シャイン嬢、君は・・・体の一部に違和感を覚えて無いかい?」

「そう言えば・・・"体"は動きますね」


やっぱり・・・・


「ビンゴだ。あの国の初代と同じだ」

「そうなんすか?!」


確か天井裏に――――


「そこの君、猊下に耳打ちで伝えてくれ。コレは国が絡んでしまう様な重大な秘密だと」

「―――――」


天上でガサガサと大げさに動いていた音は成りを潜めた。


「えっ、えーっと・・・?」

「君の確認をして気付いたんだ。側に来る人は極小の割合で―――"五体満足"な来訪者が現れると」


俺の考えている結論は―――多分、初代国王も気付いている筈。


「・・・おっ、思い出した。わ、私・・・あの時――――」

「君は元々、体の欠損か体内か知能の一部による欠損によって障碍者としての生涯を終えている筈だ」


初代の件もニュアンスが異なっている。

多分、転移して来たと思われる初代王妃は元は転生者だったんじゃないか?って事。


「じゃあ、現国王やあたしが聞いたのってもしかしてなんすか?!」

「何代目かの来訪者が危惧して当時の臣下達に本来の真実を濁らせて伝えた結果が―――今代の国王陛下に伝わっているって言うのが正解かもしれない」


話を終えて、シャインさんの元を離れて聖騎士の一人に頼み、別室で教皇猊下と話をする事にした。


「――――なんと、やはり・・・私の部下の一人が言っていた事はその事だったんですね・・・!」

「えぇ、これを俺の住んで居るあの国に極秘で手紙を送りたいんです。なので貴方がこの事を書いて私に別の―――運搬依頼を」


そう言うと―――教皇猊下のトリニティアさんは頷き


「判りました。手紙を用意します。後―――」

「後?」


シャインさんは顔を緩める。

硬い表情から柔らかな優しい表情になった。


「あちらにお戻りの際に・・・私の娘と私の配下の一人―――アサシンの部下をお連れ下さい」

「良いんですか?」


トリニティアさんは黙って頷く。


「ブライト、君の娘を」

「承知しました。パール」


すると、俺の背後に先程の暗殺者が現れた。


「ヒッ?!」

「この事で驚くのは同業者としてまだまだだよ」


メラミアは顔を覆う。


「スンマセンっす」

「いえ、私の娘も常時こんなもんでしてね。申し訳ない」


メラミアとは違って確実に姿を消し、暗殺者としての仕事を完璧に出来そうだ。


「・・・なら手紙の件、彼女に持たせていいですか?」

「「!!!」」


俺がそう言うと、二人は驚く。

どうやらトリニティアさんが信頼を置く部下の様だ。

情報は厳重にしている筈。


「・・・判りました。パール、猊下の用意した手紙は我々が扱うのには厳しい物です。お二人の住む件の国の国王か宰相閣下にお渡ししなさい」

「・・・・」


パールと言う女性暗殺者は頷いてトリニティアさんから手紙を受け取り、姿を消した。


「既に動き始めました。ではお二人は暫くこの国で滞在を―――」

「いえ、直ぐにでもシャインさんをお連れする事は出来ますよ」


彼女の容体なんかを含めて話をする。


「・・・成程、娘の新しい人格とあの二つの皆既薬の作用で体と魔力が」

「えぇ、あくまで自分の考えですんで。現状、彼女に身体を動かして貰ってからですね」


そして数時間後―――やはり、思ってた以上にシャインさんは直ぐにでも体を動かす事は出来た。


「―――ではお母様、行って参ります」

「気を付けて行ってらっしゃい」


その場で別れ、メラミアが用意した馬車に乗って帰国する。


「さて、向こうに行く間に幾つか確認したい。良いかな?」

「大丈夫です。いつでも構いません」


こうして自分の知らない所で運命の歯車が少しずつ――――動き始めた。

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