第18話「救世国にて②」

「成程、万能薬は作り手によって効果の威力が違うのか」

「特に、特級と言われる特別階級の錬金術師と薬師にしか作れない万能薬ですが・・・来訪者様の場合は効力が桁違いに凄いんすよ」


メラミアが言うには勇者より来訪者に人気が集まる程だとか。


「ファンが余所に目移りしてそれが連鎖するのか、凄いな」

【例えがアレですが・・・似たようなモノですね】


そろそろ着きそうだ。


「メラミア」

「うっす、もうすぐ着くっす」


目的地の門構えが見えて来た。


「警備の対応を先に任せる」

「判ったっす。手こずったら出て来て貰って良いっすか?」


近くの小さな礼拝堂にあるベンチで座って待っていると――――


「お待たせしたっす~!」

「おっ、どうだった?」


メラミアは一人の甲冑を着た人を連れて来た。


「彼の持っている万能薬ならアレを治せるっすよ」

「本当か!」


あ~、道中で作ってみたアレか


「どうぞ、皆既薬です」

「おぉ~、あの複雑な呪いを解く薬・・・!是非とも猊下に会って下さい!」


門を潜り、他の国とあまり変わらなさそうな街並みを見ながら奥に聳え立つ建造物の元へ行く。


「あそこが?」

「えぇ、我が国の重要な建造物である救世教会です」


元の世界とは違ってこの世界の教会はなんか自由が目立っている。


「昔はどんな風な感じでした?この国は」

「そうですね~」


聖騎士によれば――――随分と昔から今の形の自由な国になっていたそうだ。

ただし、王族や貴族に関しては随分と厳しめに行動をとっているらしい。


「国民や村民の見本って事か」

「その通りです」


元々900年も前は存在していなかったらしい。

神社育ちの来訪者が来た事で今の国が誕生したそうだ。


「それまでの百年は我々でも厳しい百年だと記憶しています。そういった文献などもこの国で厳重に管理しているので」

「ほぉ~、成程」


早歩きで来たお陰で目的地に着いた。


「件の依頼を受けて下さった冒険者だ。室内で待たせておくから猊下らを呼んでくれ」

「了解!直ぐに呼びに行く!」


門前で警備をしていた聖騎士の一人がその場を離れて行った。

入れ違いで他の聖騎士が門前の横に立ち、双方の扉を聖騎士二人が開ける。


「先輩、どうぞ」

「有難う。御二方、こちらへ」


落ち着いた内装を見つつ、待合室みたいな部屋に案内された。


「此方で暫くお待ち下さい」

「判りました」


数分待っている間に予備としてもう数本程作ってみる。


「こうやって・・・・」

「そうっす、そうやると――――」


あっと言う間に皆既薬を4本出来上がった。


「・・・・さっきのと同じ品質?」

「うっす、流石っす」


あ、月蝕草でも出来るのか


「これを・・・こうして~・・・・・おっ、なんか出来た」

「もう一つの皆既薬っすね。先程のヤツと併用して使うと効果が噛み合ってしっかりとした効力を発揮するっす」


流石だな俺


「・・・何か廊下騒がしいね?」

「みたいっすね~、どうしたんすかね?」


夢中で色々と錬金のレベルを上げている最中に廊下が騒がしくなっていた。


「ちょっと聞いてくるっす」

「・・・いや、俺も行くよ」


廊下に出ると――――


「クソッ!月蝕草を切らすとは・・・っ!」

「代用のは置いておけとあれ程言っただろ?!」


どうやら月蝕草を使った皆既薬とその代用品の用意が出来ていなかったらしい。

新人の神官が上司に怒られていた。


「あの~」

「あっ、すいません!何か御用でしょうか?」


声を掛けたら、その彼らの上司の一人が気付いて振り向いた。


「何かあったんですか?」

「あ~、実は・・・」


彼等が言うには、二種類の皆既薬の内の月蝕草の方を使った貴重な皆既薬を切らしたらしい。

その場合は、新しく出来上がるまで代用の同効果を持つ薬を置くのが当たり前らしい。

・・・が、彼ら新人はそれの管理を怠ったらしい。


「あ~、もしかして月蝕草を使った方のはもう切らした感じで?」

「えぇ、日蝕草の方も切らしてまして。大聖女様が苦しんでいると言うのに・・・」

「申し訳ありませんっ!」


新人の神官二人は何度も頭を下げた。


なんか、手助けしたいな・・・


【丁度・・・アレ二つ出来てますし、渡しましょう】

「(だね)」


メラミアに視線を移すと―――彼女も気付いた。


「そんな皆さんに朗報があるっす!」

「朗報が・・・?」


メラミアの機転と俺の行動により、救世国の宝と言われる大聖女は―――復活を果たすのであった。

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