第7話「放浪途中での出来事③」

最初の国を出て、旅を始めた。


「まさか、冒険者として旅に出る前に大群の討伐に初めて遭遇するとは思わなかったよ」

「ですね、それにランクアップはノブさんの意思を尊重して先送りにして貰いましたし」


実は・・・旅に出る前の三日前―――スタンピード終結の後に急に王族に呼び出しを喰らった。


「いや~、爵位の褒章を辞退して正解だったよ」

「多くの転移者はそういったのが苦手ですもんね」


苦手・・・と言うより自由な冒険者に制限を掛けられたらたまったもんじゃない。

だからこそ爵位は辞退した。


「その代わりにダンジョンの最下層制限を取っ払って貰って良かった」

「お金と言う選択肢もありましたが・・・冒険者でも稼げるので問題無いですもんね」


異世界に来たからには国王の面前で得られる褒美によって意味が変わる。


お金→私は欲望に卑しい身だ。

地位や身分→貴族として死ぬまで国に仕える。

その他→私は常に誠実な人間である。


「咄嗟に答える事が出来て良かったです」

「あぁ」


しかし・・・


「なーんか、あのスタンピードの・・・引っかかるんだよなぁ」

「そう言えば・・・」


ダンジョン産の魔物といい、地表に出なさそうな魔物が結構多かった。


「また調査をするらしいけど・・・大丈夫かなぁ~」

「大丈夫だと思いますよ。この世界にはレベルアップ機能が備わっていますし、ステータスの変化も相まってダンジョンでも通用する程度には難なく勝てるかと思います」


アインさんがそう言うなら・・・


「仕方ない。後は自分らが居ない後の対応をしっかりとしてくれれば」

「ですねっ」


旅を再開する。


「―――って事で、俺はそう言った免許は持ってないけどいつしかそう言った乗り物に乗ってみたいって言う願望はあったんだよね」

「そういう乗り物があるんですね~」


自分の住んで居た世界の事について色々話をした。


「いや~、アインさんにここまで久しぶりに話すとは思わなかったよ」

「ですね~、あっ、あともう少しで着きそうですよ!」


彼等が旅を始めたのと同時刻、王城にて―――――


「お父様、お話は聞きました。件の英雄様は一部の褒章を辞退したとか」

「エレイン・・・。あぁ、誠実な男だ。彼は」


執務をしていた国王、アレクサンダー・ナステアは溜息を吐く。


「彼のステータスをコッソリと法相に任せたんだがな」

「私のスキルで覗こうとしましたが・・・彼の者のステータスは表示許可が下りなかったのです。姫」


二人の大人が溜息を吐く。


「お父様、もしかしたら彼は――――来訪者かもしれません」

「ほう・・・であれば納得だな」


来訪者―――別の世界から転移してくる渡り人を総称する呼び方である。


「確か、来訪者は必ず体の一部か若しくは身体能力の一部に欠損がある状態で来たりするんでしたな」

「あぁ、どう対応すれば良いかわからん来訪者も居たと聞く」


この世界の歴代の来訪者は殆どが障害を持っていた。


「確か、一人は心肺機能でしたな?」

「その次の代の来訪者は言語能力ですな」


彼等は次第に来訪者自身について興味を持ち始めた。


「彼は見た感じ来訪者の特徴に余り当て嵌まりませんでしたな?」

「となると、彼に聞く以外は多分無理だろうな・・・」


そんな中で一人の女性が手を挙げた。


「あの~、でしたら私が確認を取りに行きましょうか?」

「君は・・・ギルドの職員か」


周囲の貴族達は気付いた。

彼は冒険者ギルドに所属していたのだと。


「君、名前は?」

「ウチの優秀な・・・ミューズと申します。リベロ伯爵様」


そう冒険者ギルドの代表は口にした。

彼の名はグレイ・ジルバーン。

スキンヘッドの暑苦しいナステアのギルドマスターである。


「なら、彼への確認は君にお願いしたい。何か判れば君の上司に報告をしてくれ」

「判りました」


場面は戻り―――――


次の国に着いた後――――。


「え?専属のスタッフが着く事になった?」

「えぇ、今日あたりにそのスタッフがこの国に来ますので、暫く御待ち頂けないでしょうか?」


ギルドの受付嬢が自分の専属になる事ってあるのか・・・?


「冒険者によっては抑制する意味合いでの特別プログラムを組んだり、見合う依頼を厳選して選んだりなどが目的として5人目の転移者以降に実施されました。因みに5人目の転移者は身体障害者ではあったそうなんですが・・・障害に見合わず物凄いお方だったそうです」

「成程」


因みにサポートタイプにも色々あるらしい。

アインさんは実際に知識が豊富なガイドに近い感じのサポートタイプ01だと事前に聞いている。


「最初の転移者は戦闘や生活サポートタイプの01とお聞きします」

「へ~」


そんでもってアインさんの先輩に当たるサポーターだそうだ。


「そう言えば、役目を終えたアインさんみたいなサポートはどうなるんだ?」


ふと、そう疑問に思った。


「―――って事で気になるんだけど」

「パートナーが亡くなってサポートを終えた私達・・・ですか?」


アインさんから簡単な答えが出て来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る