方向音痴とわたし
カトウ レア
第1話
方向音痴とわたし
わたしは音痴である。歌も音痴だが、これは練習次第、その歌への思い入れ時次第で、何とかなる。下手も横好きである。懸命に練習すれば、二曲くらい持ち歌は出来る。みんなでカラオケボックスに行っても、なんとか乗り切れる。あとは飲んでればいい。
問題は、方向音痴である。わたしの一番の趣味は旅行だから、はなはだ厄介である。まず、地図が読めない。地図を自分の中で立体化出来ない。そもそも、地図に書いてある北の方向がわからない。
北の方向については、探偵を生業にする友人はいとも簡単に、「太陽を見ればいいんだ」とか「洗濯物を干しているへ方向を参考にすればいいんだ」と言うが、意味がわからない。わたしは筋金入りの雨女だから、雨が降ったらどうするのか、と考えてしまう。前述の探偵と旅したとき、探偵は地図を一瞬見ただけで、ぐんぐん進んでいく。100%の精度で。あとを着いていくだけで良く、すんなり目的地に誘ってくれて感心した。
だけど、少し思うんだ。方向音痴だから、迷うから見えた光景のい美しさを。灼熱のカンボジアで迷って迷って、やっと着いて飲んだ、瓶のファンタオレンジジュースの甘さや美味しさ、喉越し、安心感を。普段は酒飲みなわたしが、久しぶりに飲んだあのジュース。道に迷いながらの現地の人々との交流、悪いことばかりでは、ないんだ。
近年、インターネットの発展により方向音痴のわたしも恩恵を受けている。ピンポイントの地図を印刷して歩くと、昔にはない安心感がある。ただし、何を目標として選ぶ作業は重要である。経験的に、コンビニはやや危険である。移り変わりが早い建物は、全くないことが多々あるので、注意せねばならない。
また携帯のアプリで有料だが、カーナビみたいに道案内してくれるサービスを発見したときは、感動した。なんていい時代になったんだろうと。地図アプリも便利だが、十回に三回は矢印とさ反対方向に歩いている。こまめにチェックするのが肝要である。
方向音痴な自分との付き合いは、かように長い。無事に目的地に着きますように、道に迷いませんように、祈りながら、文明の利器に頼りながら、今日もわたしは進んでゆく。一歩、一歩を。
方向音痴とわたし カトウ レア @saihate76
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