第16話

朝比奈さんが先に帰ってしまったため、俺は一人で彼女の家であるマンションに向かっている。

翼と桃には今日の放課後に告白することは言っていたためか、俺が教室を出る時に二人から

「頑張れ」と言って貰えた。あの二人はいつも俺のことを応援してくれる。今度四人でどこかに出かけたりしたいな。


もうそろそろで着くかというときに、俺のスマホが鳴った。画面を見ると朝比奈さんからの連絡で、今日の晩御飯は家で食べていってください。という旨の内容だった。また彼女の手料理を食べることができるのか。俺はつくづく幸せ者だと思う。

彼女の連絡に対して了承の旨の返信をして、今度は母親に夕飯が不要だという連絡をした。そして一応帰りが遅くなるかもしれないという事も言っておいた。

母親は俺の友人関係を翼と桃しか知らないため、きっとそのどちらかと食べると思うだろう。いつか両親にも彼女のことを紹介したい。


そう思いながら歩いていると、マンションの前に着いた。

俺は一応彼女に着いた事を連絡してから、インターホンを押して待っているとエントランスの扉が開いたため、俺はエレベーターに乗って彼女の部屋を目指すことにする。


部屋の前に着き俺はドアノブに手を掛ける。朝比奈さんが学校で言っていた通り鍵は開いており、そのまま入れるようになっていた。不用心だとも思ったがセキュリティもしっかりしているマンションだ、不審者はまずエントランスの時点ではじかれるため大丈夫だろう。

俺は一応インターホンを押してから部屋に入った。


「お邪魔します」


「お疲れ様です。改めてですがわざわざ家まで来てもらいありがとうございます。」


彼女はエプロン姿で玄関まで出迎えに来てくれた。中から良い匂いもするため、どうやら料理をしているところのようだった。

制服姿にエプロンってこんなに破壊力があるとは知らなかった。可愛すぎる。

それより・・・こうやってエプロン姿の彼女に出迎えて貰えると新婚さんみたいで頬がゆるんでしまう。


「俺もまたお邪魔させてもらってありがとうね。今日の夕飯はごちそうになります。」


「良いんですよ。私がやりたいことなので気にしないでください。ささ、どうぞ上がってください。」


「うん。お邪魔します。」


俺は改めて挨拶をしながら家に上がった。


「良かったらお母さんにお線香を上げてあげてください。喜ぶと思います。」


「そのつもりだったよ。挨拶もしたかったしね」


「挨拶?」


「うん。ちょっとね。」


俺は元よりお線香を上げるつもりだった。今日は彼女のお母さんに言わなければいけないことがある。

俺は仏壇の蝋燭に火を付けて、一本の線香に火を灯した。手を合わせてから心の中でつぶやく


『娘さんは幸せに、そして大事にします。なのでどうかお付き合いすることを許してください」


今は亡き彼女の母親には言わなければいけないと思った。大事に思っていた自分の娘の彼氏に今から俺はなるのだ。きっと今でも朝比奈 渚という女の子を見守っているだろう、一人の母親を安心させることをできるような男になるという最後の覚悟を決めるために俺は線香を上げた。


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