第15話
「その様子だと、私は湊君に負けちゃったみたいですね。」
朝比奈さんはふーっと息を吐きながら、腕をぐでーと前に伸ばしていた。
「ていうことは朝比奈さんは、満点では無かったんだ。」
「そうですね、あと少しでした」
そう言って彼女はテスト用紙を見せてくれた。右上には98と書いてあった。
本当にこの人は・・・さすがというかなんというか、まあ三年間分を予習しているなら当然か。
「そういう湊君もしっかりと満点を取れたようですね。」
「うん。朝比奈さんや翼のおかげでね。」
「本当に取るとは・・・というのが正直な感想ですが、やっぱり信じていて良かったです。」
彼女は微笑んでいた。
「それでさ・・・朝比奈さん、改めてだけど・・・」
「はい。分かっていますよ。」
俺が言葉に詰まっていたら朝比奈さんが笑顔で助け船を出してくれた。
こんな時まで助けて貰うなんて本当に情けない。
「今日の放課後でいいかな?」
「大丈夫ですよ。場所なんですけど、私の家じゃダメですか?」
「え?」
またおかしな事を言い出したよ・・・
本当にこの人は意味を分かって言っているのかどうか分からない。
「なんで朝比奈さんの家?ていうかまたお邪魔してもいいの?」
「学校で言われるよりも家で言われたほうが精神的にも楽というか、二人きりだからなにをしても良いというか・・・」
「・・・・・・」
これはどっちだ?狙って言っているのか?いや、朝比奈さんのことだきっと天然で言っている。そうに違いない。
「ん、まあいいや。じゃあ朝比奈さんの家に行くよ。一緒に行く?」
「いえ、少しだけ準備があるで私は先に帰りますね。湊君は後から来てもらってもいいですか?インターホンさえ鳴らしてくれれば鍵は開けるので、勝手に入ってもらって構いません。部屋の場所は覚えていますか?」
「まあ覚えているから大丈夫だと思うけど・・・」
「じゃあ大丈夫ですね。それじゃあ私はこのまま帰ります。また後で。」
朝比奈さんはそういって、足早に教室を後にした。
「朝比奈さんには勝てそうにないな・・・」
彼女の後ろ姿を見ながらそうつぶやいた。
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