第14話

「よし、じゃあ今日は先週のテスト返しをやっていきます。」


教団に立つ教師の声で俺は意識を取り戻した。

今の時間は、数学。中間テストの最後のテスト返しになる。

緊張で少しの間だけ記憶がない。

数学以外の教科は昨日までに全部返ってきており、どれも平均点以上取れており翼も桃も驚いていた。一番驚いているのは俺自身である。

朝比奈さんはどの教科もクラスの最高得点を取っており、教師陣も彼女に対しては他の人には言わない労いの言葉をかけていた。しかし朝比奈さん本人は満足をしていないようだった。理由を聞いたら、なんと学年最高得点を取れなかったからだそうだ。つくづく彼女はハードルが高い。もう少し気を抜いても良いんですよ?


そうこうしている間に教師が黒板にクラスの最高得点と、学年最高得点そして平均点を書いていた。

その時クラスでどよめきが起こっていた。学年最高得点の場所に100と書いてあったからだ。そして理由はもう一つ、クラス最高得点の場所にも100と書いてあった。クラス中の視線は自然と朝比奈さんの方へと向いた。当然だろう。彼女は他5教科すべてをクラス最高得点を取っているのだ。皆がそう思うのは自然な流れだ。しかし朝比奈さん本人は違うようで、俺のほうをまっすぐ見ている。きっと俺が最高得点者だと思っているのだろう。かく言う俺もそう思っている。数学は他の教科とは比にならないくらい自信があり、満点を取れているという自信もある。


そして次の瞬間にその自信は確信に変わった。

受け取った用紙の右上には、教師の文字でexcellentと書いており、100の数字があった。

俺は平然とした態度を取りながらも内心で凄く喜んだ。自分の頑張りがしっかりと実ったのだ。この教科だけでも彼女に並んだという事実、それがとてつもなく嬉しかった。

席に戻った俺は朝比奈さんの方を見て、笑顔でピースをした。

彼女は花が咲いたような笑顔をしていた。どんな事を思ったのかは分からない、しかしきっと俺と思っていることは一緒だろう。


これで彼女に告白をする勇気、覚悟、理由ができた。


授業終わりに俺は朝比奈さんの席に行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る