第6話
「将来私の料理を毎日食べてくれる・・・その人になってくれませんか?」
彼女はとても真剣な顔でそう言い放った。俺はその彼女の顔を見ながらとても変な顔になっていたと思う。この子は何を言っているんだ?
「えっと・・・急にどうしたの?そんな事を言い出して・・・」
「私は湊君の事が好きなんです」
朝比奈さんは顔色を変えずにそう言った。俺は真正面からとても真剣な告白を受けて分かりやすく動揺をする。だって、今まではそんなそぶりも何もなかったのに、どうして急に・・・
「私は湊君のことが好き。これは変わりません。だからこそ早く告白をしなきゃって思ったんです。」
おお・・・凄いな。よく淡々と言えるな・・・
「湊君は知らないかもですが私は結構告白もされているし、モテてもいるんですよ?」
知ってる。正直結構焦ってた
「それに、湊君も結構モテているんですよ?落ち着いているし、勉強以外のことなら、ある程度の事ならどんなことでもそつなくこなしちゃうし。私の周りでもいいねって言っている子も結構います。」
意外、それは知らなかった。というか興味がなかった。
「だから・・・早く告白をしなきゃって、誰かにとられちゃう前に早く私の覚悟と、思いを伝えないとって思ったんです。」
俺は無言で聞いていた。
そうか・・・朝比奈さんは勇気を出してくれたんだ。俺が出せなかった告白をするという勇気を俺は彼女に出させてしまったんだ。なんで俺は彼女よりも先に告白ができなかったんだ・・・いや、違う。できな買ったんじゃない、しなかったんだ。俺は何かと理由をつけて告白をしなかった。
『彼女とは釣り合わない』 『彼女に釣り合う男になってから告白をする』 『振られたら立ち直れないから』
そんな理由をつけていた。
でも朝比奈さんは勇気を出して告白をしてくれた。誰かにとられるのが嫌という理由だけで、きっとその気持ちは彼女よりも俺の方が強かったのに。勇気を出してぶつかってきてくれた。
確実に成功する告白なんて存在しない。それは人の心が絡まる問題だからだ。人の心なんてそんな簡単に分かるものではないし、人の心というのは簡単に揺れ動く物なのだ。だから彼女が全力でぶつけてくれた気持ちには、俺も全力で答えなければいけない。
「俺も朝比奈さんの事は好きだよ。大好きって言ってもいい。朝比奈さんの事しか考えてないくらいには君のことを好きだと思っている。」
俺がこう言うと彼女はさすがに恥ずかしくなったのか顔が赤くなるが、俺はそれを無視して続ける
「でも・・・今の俺じゃあ朝比奈さんには釣り合わないと思うんだ。朝比奈さんはスポーツも、勉強もできてさらには人望もある。俺とは真逆の人間だ。」
「そ、そんなことは・・・」
「だからさ、朝比奈さんには待っていて欲しいんだ。」
「え?」
朝比奈さんは顔を上げて意外そうな顔をする
「今回の中間テストで俺はいい点を取るように頑張るからさ、その時にまだ付き合うのが俺で良いなって思っていたら、今度は俺から告白をさせてくれないかな・・・」
俺は自分の情けなさに腹が立ちながらも自分の気持ちを彼女にぶつける。
そうすると彼女はどんどんと嬉しそうな顔になっていく
「もちろん。この気持ちは変わりませんよ。もしまだ湊君の気持ちに整理がついていなくても、私はずっと待ち続けますよ。それも一生と言ってもいいです」
「ありがとう」
俺は少しでも彼女に近づきたかった。彼女と釣り合えるようになりたかった。だから頑張れる。
でも・・・
「でも・・・もちろん自分でも頑張るけど、朝比奈さんに勉強を教わらないといい点を取れる気がしないからこれからもよろしくね!」
「あはは!そうですね!確かにそうですね。私も告白をOKしてもらうためにも、今まで以上に厳しい指導をしていくつもりなので覚悟しておいてくださいね?」
彼女は今までとは違うタイプの圧がある笑顔で見てきた。
「全力で学業に専念させて頂きます」
そんな普段と変わらない他愛もない話をして俺たちは笑いあった。
頑張ろう・・・
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