第3話 桃視点
今回のお話は第三話の時の桃視点になります。
マラソン大会が終わりGWが明けた月曜日のお昼休みに、親友の渚が私に相談をしに来た。
「湊に対してどうやって接するのが正解か分からない?」
「そうなんです・・・。湊君の事を好きだという事は自覚したのはいいんですけど、これからどうするのが正解なのか分からなくて・・・。」
渚は本当に困っているのか、顎に手を当てて難しい顔をしていた。
渚はこんなにも可愛いのに自分に対して本当に自信が無いからなぁ。もし仮に変に遠回しなアドバイスもをしてもややこしいことになるだけだろうし、湊も湊で変に鈍感なところがあるしなぁ。二人とも相性はいいはずなのに、どっちとも恋愛が下手だから多分このままだと付き合うなんて夢のまた夢だろう。
「渚、今日の放課後から二人でテスト勉強始めるんだよね?」
「はい・・・。勢いで誘ったのはいいんですけど、湊君の顔をまともに見れる気がしません!」
渚は恥ずかしいのか、机に顔を伏せていた。
そんな状況ならもう少し考えてから行動すればいいのに・・・。と内心呆れながらも、目の前の親友のためにも頭をフル回転させた。
「渚、テスト勉強をしているときに湊に嘘をついてでもいいから、湊を家に誘いなさい。」
「う、嘘?」
「そう。誘う理由は別になんでもいいよ。勉強を見るためとか、何か困ったことがあるとか。そういうのでいいから、家に誘って。渚って今は殆ど一人暮らしの状態なんでしょ?」
「ええ、まあ確かにそうですけど。」
「誘うときにそれは湊に絶対言っちゃだめだよ。湊は慎重すぎるからその情報言った時点で来る確率はほぼゼロになる。そして、無事に湊が渚の家に行って、二人っきりになったら・・・」
「なったら・・・?」
「襲う」
「おそっ・・・何を言ってるんですか!?」
「ああ、どっちかというと渚は襲われる役か。」
「襲いませんし、襲われません!湊君は絶対にそんなことしません!」
渚は顔を真っ赤にしながら噛みついてくる。
私としては軽い冗談のつもりだったのに、こんなにも必死になっている渚を見ると面白くて時々からかいたくなる時がある。
「まあ冗談はこれくらいにしといて・・・」
「今みたいな冗談はやめてください!」
「いやねぇ、渚の反応って面白いからさぁ。ていうかさっきの反応を見る限り、湊の事相当信頼しているんだね」
私がこう言うのも渚は絶対に男子の事を怖がっている・・・とまでは行かないど関わらないようにしている。まあ渚レベルの外見だとそれはもう多くの男子から言い寄られたのだろう。それで言い寄られるくらいなら、関わらないようにするというのが彼女なりの結論らしい。まあ私もそれなりに、多くの男子から告白をされてきたから気持ちは分かる。全く知らない男子に言い寄られて、断るとあっさりと引く人もいれば、なぜか怒ってさらに言い寄って来る人もいた。気が弱い方の渚は特にしんどかっただろう。
「まあ・・・湊君は他の男性とは違いますから・・・」
「へぇ・・・」
渚にここまで信頼される湊は一体何をしたんだろう・・・めっちゃ気になる。
「今はこの話はいいんです!それで家に誘ったらどうすればいいんですか?」
渚はもうこの話題を続けるのは恥ずかしいのか、すぐに切り替えて聞いてきた。
「家に誘ったらそのまま告白・・・」
いや、半端な告白だと湊は尻込みするかもしれない・・・ならもういっそ・・・
「いや、そのままプロポーズしちゃった方がいいよ」
「プ、プロポーズ?!それはさすがに早いというか、いや別にするのが嫌というわけでは無いんですけどね、まだ私たちは結婚できる年齢では無いし、それにですね・・・」
「おーい?渚ー?帰ってきてー???」
本当にこの子は湊のことになるとどうしてこうも駄目になるのだろう
「渚、最後まで聞いて。プロポーズしたほうがいい理由がしっかりあるの。」
「この年齢でプロポーズをする理由ですか?」
「そう。湊はね臆病なの。いや、慎重って言った方がいいか。慎重すぎる性格からか自分が自信を持てるようになってからじゃないと絶対に告白もアプローチもしてこないと思う。今の状況が続くと付き合うのも相当先になると思うの」
渚は黙って聞いているためそのまま続ける
「だから渚自身の覚悟を湊に見せてあげて。」
私がそういうと渚は何かに気づいたのか、顔を動かした。
「部外者の私がこんなことを言うのはお門違いなのは分かっているけどね。きっと渚も湊も他の人に目移りはしたりすることは無いと思うの。だから恋愛は二人のペースで進んでいくのが一番っていうのは分かっているけど・・・前も言った通り私は二人に幸せになってもらいたいの。だから後悔しないうちに気持ちは伝えないとね」
わたしが言い終わると渚はじっと私を見つめていた。
「約束ですもんね・・・分かりました。今週の土曜日に湊君を家に招いて、私なりの覚悟を見せたいと思います。」
やっぱりこの子は頭が良いな。私が言いたい事がしっかりと伝わったようだ。
渚は真剣なまなざしで教室内にいる湊の事を見ている。そして今度は、なぜか顔を膨らませて私の方を見てきた。
「どうしたの?そんな顔を膨らませて。」
「いえ、別に・・・桃さんは湊君の事を良く分かっているなって・・・」
「まあ中学の一年の頃からずっと一緒にいるからね。って、もしかしてだけど」
まさか
「妬いちゃった?」
私が少しからかうように聞くと渚は顔を真っ赤にして顔を伏せた。
可愛すぎるなぁ・・・
「すみません。まさか私がこんなにもやきもち焼きとは思って無かったです・・・。別に彼女でもないし、桃さんの方が湊君と一緒にいる時間が長いからよくわかっているのは承知の上なのに・・・どうして湊君のことになるとこうなってしまうんでしょう・・・」
顔を伏せながらそう言う渚の頭を撫でながら私は言う
「そんなに独占欲を出すって事は本当に湊の事が大好きって証拠だよ。大丈夫。渚もこれから沢山湊の事を知っていくんだから。良いところも、駄目なところもね」
本当にこの子は・・・やきもちなんていっぱい妬きな。自分が好きな人のことは一番詳しくありたいと思うのは当然の事なんだから大丈夫。独占していいんだよ。自分の物にするってくらいの気持ちじゃないと恋愛なんてできないんだから。
「よし!渚!覚悟を決めたところで少し湊と話してくれば?このまま放課後二人っきりは色々意識する事もあるでしょ。まずは湊の顔を見て話すところからね」
「そう、ですね。少しお話してきます。」
渚は湊のところに行くときに少しスキップになっており、好き好きオーラが出まくりだった。
あんなに分かりやすいのになんで湊は確信を持たないのかなぁ。
飲み物を買いに行くために廊下に出てから、教室の中を見る。ここからだと話の内容は聞こえないけど・・・よしよし。しっかりと話せている・・・?なんか渚泣きそうじゃない?え、湊なにしたの!?内容によってはお説教しなきゃいけないけど・・・って今度は渚が凄く赤くなって・・・あ、戻ってきた。
「え、何?どうしたの?なんか嫌なことでも言われた?」
「い、いえ。その逆です・・・」
そう言って渚は自分の席に戻っていった。
後からクラスメイトに聞くとどうやら湊が凄い事を言ったらしい。
どうしてそれが言えるのに告白はできないのか・・・
私が思っていた以上に二人は恋愛が下手なのかもしれない・・・いや下手だ。
うん、めちゃくちゃ下手。
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