第12話
俺は闇アキバの真実を皆に明かした。
ダーククリスタルは皆の身体に取り返しのつかない副作用を与えていると。
住人が陽に当たって大火傷を負ったというショッキングなニュースも相まって、ダーククリスタルの副作用の噂はあっという間に広まっていった。
だが、住人たちの反応は想像していたよりもずっと冷たいものだった。
「ただ陽に当たれないってだけでござろう」
「むしろ夜目が効くのは闇アキバでの生活に有利だにゃん」
「そもそも日向ぼっこなんてやる奴がおかしいだろーYO」
「地上でオタク狩りの手にかかるぐらいなら、ここで静かに死ぬ事を儂は選ぶがのぅ」
「難しい話は分かんないっぴ・・・」
古参を中心とした住人の大多数は、暗アキバの生活にすっかり慣れきってしまっていて、闇アキバの真実を知っても、事をあまり深刻に受け止めなかった。
新参を中心とした一部の住人は、驚き困惑したが、地上の恐ろしさのことを考えたら、それでも闇アキバに残るしかないという判断をした。
行き場をなくした住人たちの不安は、電力消費を跳ね上げる原因を作ったギャルたちに向き、以前から深まりつつあったギャル容認派と反ギャル派の溝を一層深くした。
俺は何か変えなければと思って必死に足掻いたが、闇アキバに混乱をもたらすだけの結果になってしまった。
その上、ダーククリスタルとの繋がりを日差しで焼き切ってしまった俺たち向日葵は、何も犠牲を払っていないのに街のエネルギーを消費するのかと冷たい目で見られるようになり、肩身が以前にも増して狭くなった。
もう、俺の居場所はここにはないのかもしれない。
俺が地上に出ようとすると38氏が待ち構えていた。
「まだ、やるのでありますか」
俺は無視して通り過ぎようとする。
「1ヶ月もすればまた闇にも馴染むのであります」
38氏が心配そうにいう。
1ヶ月。地上から来た新参の前に結合氏が現れるおおよその時期だ。
陽に当たらなければ、すぐにまたダーククリスタルとの繋がりは戻るだろう。
「得体の知れないものに取り殺されろっていうのかよ」と俺は毒づいた。
「エネルギー問題は調達班が必ず解決するのであります。ギャル交易を通して地上からの送電網を整備し・・・」
地上から隠れながらそんな事をするのは現実的ではない。
38氏だってそんな事はわかっているはずだ。
それに、違うんだ。38氏。
ここはもう理想郷じゃないんだ。
少なくとも俺にとっては。
「俺は勝手にやっているだけだ。関わるなよ。お日様の匂いが、移るぞ」
俺は38氏を残し、逃げるように地上に出た。
蝉のうるさい鳴き声が俺を出迎える。
見上げれば青空が広がっていて、焼けるような日差しが降り注いでいる。
別の経路から出た向日葵たち数人と合流し、比較的安全とされる繁華街を歩く。
当てもなく出てきてしまった。
今日は、どこに行こうか。
俺が、考え込みながら歩いていると、
「ぴーちゃん!!」
と俺を呼ぶ叫び声が聞こえた。
少し行った先で、あーこが青い顔をしてこちらに向けて指を刺している。
いや、違う。俺の後ろだ。
心臓が跳ねる。
俺はすぐに振り返る。
「んん〜〜? オタクくんの匂いがするゾォ?」
オタク狩りが人混みのど真ん中に出現していた。
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