第10話 過去のコマチさん
俺はまた夢を見ている。多分。今さっき見た夢の中に出てきた女の子はどうなったのだろうか?続きがこの夢だろう。
(フ〜フッフン。)
あの女の子だ。何かは分からないが料理を作っている。
(できた!お昼ご飯、できましたよ!)
奥の部屋から、女の子を救った女の人が現れた。
〈は〜い!相変わらず、コマチちゃんの料理は美味しそうだね。〉
(フフッ。ありがとうございます。)
〈それじゃあ、いただきます!〉
(いただきます。)
〈う〜〜ん!美味しい!もう、コマチちゃんがいない生活なんで想像できない!〉
(ちゃんと、働いてくださいよ!)
何だろう、サクラさんにコマチさんがいたらこんな感じになってそう。
〈(ごちそうさまでした。)〉
女の子はお風呂を沸かしてから、
(ワラナさん、お風呂が沸きましたよ。)
と、言っていた。あの女の人、ワラナさんと言うんだ。覚えておこう。
〈は〜い。一緒に入る?〉
(どちらでも、いいですよ。)
〈なら、入ろ〜。〉
(は〜い。)
俺は、お風呂をあがるまで待った。
〈ふぅ〜。気持ちよかった。〉
(寝ましょうか。)
〈は〜い。おやすみ〜。〉
(おやすみ。)
コマチさん達は眠ってしまった。不意に、
(………。あなたは誰ですか?)
「………?」
(そこのあなたですよ。)
「俺?」
(そうです。幽霊ではないですね。あなたは、誰ですか?)
「俺は、イナリです。」
(そうですか、イナリですか。ケイヤではないですよね?)
「あの男の子では、ないですよ。」
(そうですか。)
「あなたは、コマチさんですか?」
(そうですけど?)
「今は、西暦何年ですか?」
(今?今は、1992年ですよ?)
「ありがとうございます。」
現実から、役50年前のようだ。
(どうかしましたか?)
「いいえ、何もありませんよ。」
(それより、あなたは何なんですか?)
「俺?俺は強いて言うなら、ただの一般人かな?」
(そんなわけないでしょ。あと、気のせいでしょうか?あなたから、私の匂いがしますね。)
「そうですか。」
(………。本当にあなたは何なんですか?)
「………。俺は、ただの一般人。だけど、夢を見ているね。」
(それって、どういうことですか?)
「そのままの意味ですよ。俺は熱を出して寝ています。そして気づいたら、この夢の中の世界に迷い込んじゃたんですよ。」
(ここは、現実ですよ?)
「俺にとっては夢の中か、過去か、なんですよ。」
(じゃあ、あなたは未来人ですね。質問です。未来で私は何をしてますか?)
「なぜかは分からないですが、小さい神社で祀られてますよ。」
(ふ〜〜ん?)
俺は未来のことはなるべく伏せておきたかった。
もし今ここで、何が変化したのだったら、バタフライ効果で未来が変わる可能性があるからだ。
(多分ですけど、私は未来であなたの家に住んでいますね。)
「………。」
(未来人、匂い、発言からこのことが推理できますね。)
「………。やっぱり、コマチさんには敵いません。そうです。今も多分、俺を看病してくれているんじゃないでしょうか?」
(フフッ、そうですか。)
俺はコマチさんのことが寂しくなった。すると急に意識がフワフワし始めた。俺は言いたいことを言い残そうとした。
「コマチさん、俺はもう帰らないといけないらしいです。未来で、また会いましょう。さようなら。」
(さようなら。)
俺は意識を失った。もう一度、意識を取り戻したときは、現実に戻っていた。
(おはよう。)
「おはようございます。」
(イナリ、昔の私に会ってきた?)
「会ってきましたよ。コマチさんの過去がわかりました。とても、辛い経験をしましたね。」
(………。)
「俺がケイヤくんの変わりには成れませんが、話を聞くぐらいならできますよ。」
(ッ!!イナリ、聞いてくれる?)
「はい。絶対に聞きますよ。」
俺は熱でまだクラクラする中、コマチさんの話を聞くのだった。
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