第9話 夢

私が読書をしているとイナリが、


「うぅ〜〜。」


と、唸りだした。

私は急いでイナリを起こした。


(どうしたんですか?)


「……。悪い夢を見ました。」


(なんだ、悪夢ですか。良かったです。体調が悪化したのかと思いましたよ。)


「そこは大丈夫です。」


(どんな、夢を見たんですか?)


「コマチさんが、しっぽをモフらしてくれない夢です。」


(いくらでも、モフってもいいですよ。)


「本当ですか?じゃあ、遠慮なくモフらしていただきますね。」


(お願いだから、落ちいてモフってくだ……)

(うやッ!)


「気持ちいい触り心地、艶がありしなやかな毛。これぞモフモフ。あっ!ヤバい。興奮して、頭痛が……」


(イナリ!?)


イナリは気絶するように倒れた。


―――――――――――――――――――――――


えっと?たしか、俺はしっぽをモフって、気絶したはず。ここは、夢の中?にしては、リアルだ。俺は動けるか?おぉ!動ける。しかし、物には触れないらしい。とりあえず、周りを確認する。

俺に似た人物と女の子が制服を着てどこかに向かっている。


(ケイヤ、朝ごはんちゃんと食べた?)


「あぁ、ちゃんと食べたよ。コマチ、いちいち心配しなくっていいよ。」


(心配します。ケイヤはほっとくとすぐに何もしなくなって、野垂れ死にそうだからね。)


「そんなこないって。」


(あります!)


「ないって!」


(ある!)


「ない!」


(ある!)


「ない!」


「(ハァハァ。)」


「ともかく、俺は平気だよ。」


(……。ほんとにぃ?)


「本当だよ。」


(ほんとの、ほんとにぃ?)


「本当って言ってるだろうが。」


(じゃあ、信じるね。その代わり、絶対に生きて大人になってね。)


「おい!野垂れ死ぬ前提で話をするなよ!」


(アハハ〜。なんのことやら?)


「この!小悪魔め!」


(悔しかったらここまでおいで!べぇ〜。)


「くそッ!」


(大体、面倒くさがるか………)


ブッブー!


「コマチ!!」


俺にそっくりな人物は、コマチという女の子を守るために身代わりになった。


(ケイヤ!ケイヤ!)


「…………」


(あの、生意気なケイヤがこんなので死ぬはずがない!お願いだから、生きていて!お願い!)


「…………」


残酷にも、女の子の願いは叶わない。


(ハハッ!ケイヤ、約束したよね?絶対に生きて大人になる、って。だから、お願い!起きて!ケイヤ!)


「………」


女の子は絶望した顔になった。それから、しばらくして救急車が来たが、もうすでに事切れていた。

女の子はフラフラと歩きながら、近くの神社に行った。そこで、首を吊った。

とても悲しいことを見てしまった。俺は涙が溢れそうになった。

しかし、そこで終わらなかった。首を吊ったはずの女の子が、動いたのだ。


(私、首を吊ったはずじゃ?えっ?!)


女の子は黒髪が金髪になっていき、狐耳としっぽが生えた。


(ハハッ!なんで、私だけ生き返っちゃうの?一緒にケイヤと逝かせてよ!!)

(神社の神様。お願いだから、ケイヤを生き返らせて!)


しかし、何も起きなかった。そこから女の子は、1年の間何もしなかった。しかし、そんなある日、一人の女の人が現れて、


〈あんた、そこのあんた。〉


(ハハッ!何でしょう?)


〈あんた疲れとる顔しとるけど、どうしたん?〉


(ハハッ!好きだった、幼馴染が一年前死んだんですよ。私は、あまりにもショックが大き過ぎて自殺したんですよ。そしたら、私は生き返って、幼馴染は生き返らなかったんですよ。なんで、私が生き残ってしまったの?なんで?なんで?なんで?なんで?)


〈あんた、その幼馴染って、ケイヤくんのことか?〉


(なんで、知っているんですか?)


〈有名だよ。ここら辺じゃ。〉

〈じゃあ、あんたは一年前から行方不明のコマチちゃんだね。〉


(そうですけど、私、見えてますよね?)


〈私にはね。私は霊感が強いから見えるけど、一般人には見えないよ、あんたのことは。〉


(そうなんですか。もう、どうでもいいです。)


〈あんた、元気だせ。身代わりになった、ケイヤくんが泣いてるで。〉


(!!)

(………。そうなんでしょうか?)


〈きっとそう。ケイヤくんは君を守るために死んたのだろう?なら、ケイヤくんは君に笑ってほしいはずだよ。〉


(そうですか。なら、私もくよくよせずに頑張ります!)


女の子は元気を取り戻した。それから、女の子は色々なところを周り、家事力や、元気をつけていった。

俺は、女の子が元気を出したところで泣いてしまった。でも、気のせいだろうか?あの女の人、サクラさんに似ているような気がする。

そんなことを考えていると、急に意識がフワフワして、視界が真っ白になり、俺は目を覚ますのだった。


(おはよう。具合はどうですか?)


「おはようございます。具合はまだ、ちょっと頭が痛いのと、体がフラフラします。」


(そうですか。お昼ご飯はできてますよ。)


「そうですか。なら、いただきます。」


(は〜い。もって、きますね。)


「ありがとうございます。」


俺はお昼ご飯のうどんを食べてから、また、眠った。

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