第12話

「しかし、なんでミカは俺を…その…好きになったんだ?」


「そりゃ毎日ママから、samの話を聞かされて、どんだけ素敵な男かと思って興味が湧いたからよ」


「でも、実際はこんなジジィだったって訳だ」


「まぁね…でもさ…」


ミカはsamに話し始める。


ママはね、今までつきあっていた…いや、ほとんど男の事はうろ覚えでこんなやつがいたよって感じだったんだけど、samだけは、全て最初からママがいなくなるまで鮮明に覚えていたよ。


んで他の男の話をすると、すぐにsamの話に変わるんだよ。


「samなら違ったな…とか、samならこうした」とかね。


最初はsamの事は、私は異性の男というより、なんかパパみたいに思っていたんだ。


でも、ママの話でsamってこんなにママを愛してくれた…こんなにも女を気持ち良くさせる…こんなにも愛するひとを包み込む男なんだって思ったら、パパとしてじゃなく、私も女として愛されたい、愛してくれるかな?って気持ちになったんだよ。


で、ママに言ったんだ。


「私がsamと出会えたら、私をsamは愛してくれるかな?」ってね。


そしたらママはこう言ったの。


「samはダメよ。あたしのsamなんだから…」


始めてママにヤキモチを妬いたわ。


「じゃ、なんで今までsamを探さなかったの?今でもあのアパートに住んでるかもしれないじゃない」


「あのアパートは取り壊されていたわ…探したわよ…でも、逃げた私が、消えた私がsamをもう…」


「そんなの関係無いよ。好きなら奪えばいいじゃん、私ならそうする」


「それが出来るなら、samはあんたに譲るわよ。samならミカを幸せに出来るから…」 


「ホントだね?約束したよ!」


「やっぱダメ!samは私のだから」


「ズルいな!なら、samに決めて貰おうよ」


「samと出会えたらね」


それでsamが住んでいた保土ケ谷に店を開いたんだよ。


きっとsamは保土ケ谷にいる。


きっとsamは見つけてくれるってね。


でも、店開く少し前に、ママは死んじゃった。


癌だったんだ。


治療もしないまま、あっけなくね。


最後にママはsamをよろしくって言って目を閉じたよ。


「そっか…で、俺が現れたのか…でも最初から何で俺を知ってるって話さなかった?」



それはsamが、なかなか見つけてくれなかった罰だよ…って言うのはウソでママの事話したら、samは私に恋愛感情を持たないと思ったからだよ。


私もママみたいにひとりの女として、愛されたいからね…。


「もう、愛しているよ…」


samはボソっとそう言った…。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る