第4話
「三井さんもカラオケ歌う?」
「いやー俺はいいよ」
「歌うの嫌い?」
「そうじゃないけど、恥ずかしいからな」
「大丈夫よ」
「まぁ、気が向いたら歌うよ」
「うん、楽しみだね!」
常連客の香川がデュエットを入れた。
「ママ、早く!」
ミカはマイクを持ち、香川のボックスへ行く。
定番のデュエット曲。
ミカはかなり歌がうまい。
三井は拍手をし、ミカに話し掛ける。
「ミカちゃん、歌、うまいね…
びっくりした!」
スナックのママだからね…と、言いつつ、三井のグラスに氷を入れた。
ミカの肩を抱き、一緒に歌って満足したのか、香川は帰って行った。
店には、三井が残った。
「あはは、帰りそびれちゃったな」
「え?また帰るつもり?私をひとりにするの?」
「かなり長居しちゃったからね」
「いいの!まだ、居て!」
可愛いミカに引き止められるのは、三井は嬉しかった。
「じゃ、もう少しだけ飲んでいようかな?予定がある訳じゃ無いしね」
「なら、ずっと居てよ、なんなら、ラストまで」
「つか、店に来始めたばかりの俺を、なんでいつも引き止めるの?」
スナックみかは、時間で区切るセット料金ではない。
ボトルを入れた三井は、長く居座っても、たいして料金は変わらない。
「なんでかな?私にも判らないよ…でも、一緒にいたいって思うんだよ」
三井はミカと言う名の女には、縁深いのかと思いつつも、カウンターより動くことは無かった。
「今日はホントに暇な日なんだ」
「給料日前だから?」
「それもあるけど、うちは、土日が弱いんだよねー」
「そうなんだ?って休みはいつ?」
「水、木曜日が多いよ」
「土日休んで、水木やれば?」
「そうもいかないんだよ…水曜日、木曜日は用事がかたまるからね…でも、三井さん、来てくれるなら、開けるよ」
「イヤイヤ…せっかくの休み、俺なんかの為に…身体を休めなよ…そう言えば、さっきのお客、常連みたいだけど…」
「うん、いつも何かしらおみやげくれて、嬉しいんだけど、隙きみて私を口説くんだよ」
「ちょっとウザい?」
「うん…悪いひとじゃないんだけどねー」
「ミカちゃんくらい可愛いかったら、俺だって口説くかもよー」
「だったら…口説いてみてよ」
「あはは…そのうちね…」
「そのうち?なんか、酷くない?」
自然に話せるミカとの会話は、楽しく時間を忘れさせた…。
「もっと三井さんの事知りたいな…」
「たいした男じゃ無いし…」
「たいしたか、たいして無いかは私が決めるんだよー」
「俺の何が知りたいの?」
「うーん、そう言われたら…」
ミカは、ママのミカと三井の当時の話が訊きたかった…。
しかし、ミカはまだ自分が黒髪のミカの娘だと言う事は隠しておきたかった…。
何故なら、自分が黒髪のミカの娘なら、三井は自分への接し方を変えるかも知れない…客として、男として店には来なくなるかも知れないと言う怖れがあったのだ。
「ねぇママ…まだ言わなくていいよね?だって私は茶色の髪のミカだもんね…」
ミカはママが頷く様な気がしていた…。
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