すごい人達の集まりだったんだな
周りを見渡す。
地面に倒れて動かない人、身じろぎはしているけれどへたり込んでいる人、荒い息と呻き声があちこちから聞こえる。
地面には血痕が生々しく散っている。人のものか、魔物のもの、どっちだろう。どっちもかな。
異世界の魔物が倒せば消えるってのは、よかったと思う。実体が残ったままだとさらにカオスな情景になってただろう。
「この子のこと、お願い」
「あぁ。儀式の確認を頼む」
月宮が美坂さんを富川さんに預けている。美坂さんはぐったりしてる。意識がないんだろう。
ダンジョンの結界を切って血を吐いてたからな。ワープゲートなんてでかいものを切ったら、そりゃそうなるよな。
「章彦、おまえら、無事か」
声がかかってそっちを見る。
うわっ、血まみれ。……レッシュか。
「レッシュさんきたないネ」
「おま、それ、ひどっ」
リンメイの率直すぎる感想にレッシュは口をパクパクさせている。
「怪我を治しましょう。皆さんも」
近づいてきたのはリカルドさん、だけど……。
纏っている「気」がいつもと違う。もっとこう、なんていうか、もっと格上、みたいな。
とか考えてたら範囲魔法でレッシュや俺らの傷を癒してくれた。
「サンキュ、リカルド」
やっぱりリカルドさん、だよな。
「あー、雰囲気違うのに気づいたか」
レッシュが笑う。
リカルドさんには異世界の転生者の魂が宿っているんだそうだ。その魂は元の世界で神に近い存在で、亡くなった時にこっちに来て、異能の素質を持ったリカルドさんの肉体に宿ったんだとか。
普段は表に出てくることはないけれど、世界の危機に相当する危険に見舞われた時には顔を出すそうだ。
「そういえば本部で監督者って言われている人達は過去に世界を救う働きをしたことがあるって言ってたっけ」
「そう。そん時おれも一緒に戦ったからオマケで世界を救ったことになってるみたいだな」
「おまえも神剣が使えるだろう。おまけということはないぞ」
そう応えるリカルドさんはもう、いつもの彼だった。
転生者の魂とか神剣とか、すごいよな。
「章彦達も、きっとすぐにおれらの仲間入りだぞ。――
レッシュが“ディレク・ケラー”の核を見た。
釣られるように顔を向けると、核のそばで富川さんが手招きをしている。
儀式がどうなったのか、判ったのかな。
「行こう」
仲間に短く言って、向かう。
「幸いなことに儀式はまだ失敗ではない。が、十分に力を発揮できない状況にある」
動ける者達が集まったところで、富川さんが現状を説明し始めた。
結界柱は無事だが、結界石が想定以上に壊されてしまった。なので邪神を未来に吹き飛ばすエネルギーがまだ足りない。
正確に言うと、吹き飛ばす力はあるが、“ディレク・ケラー”の力の方が上回っていて抵抗されている。
これ以上こちらの力を増やすのは不可能なので、儀式を完成させるためには“ディレク・ケラー”を弱らせる必要がある。
「そこで、動ける者の中から誰かが“ディレク・ケラー”の元へ行き、交戦して、力を弱らせなければならない」
驚きの声の後、場が静まった。
「誰でもいいというわけではない。まずは前にも話した通り、世界の危機に関わり退けた者は候補から外れる。世界意思の一部を有した“ディレク・ケラー”と戦う際に世界意思の妨害を強く受けるからだ」
富川さんが、話を聞く人達にぐるりと視線を向ける。
「次に、『封神の虹眼』の持ち主は必須だ。できればより力を使いこなせている者がいい」
彼の目が亜里沙に留まる。
「さらに、他の魔眼を持っている者がいれば、ありがたい」
そして、亜里沙の隣の俺と視線を合わせてきた。
もったいぶった言い方をするなぁ、富川さん。
俺らに行けって、言ってるだろう。
本当は、そんな重責背負いたくない。
けれど俺らしかいないなら、俺らが行くしかないよな。
ふっと笑う。
富川さんも、俺の意図を汲み取って、微笑を浮かべた。
「行きます!」
亜里沙が力強く宣言した。
おぉ! と歓声があがる。
「亜里沙が行くなら、俺も行くよ」
亜里沙の手をぎゅっと握ると、恥ずかしそうな顔で握り返してくれた。
歓声がはやし立てる声になってしまった。
リンメイ、ヘンリー、ラファエルを見る。
俺らと違って彼らは魔眼を持っているわけじゃない。邪神と戦うなんて強制できるわけがない。
無理してついてくる必要はないぞ、と言いかけたが、みんなの答えはもう出ていたみたいだ。
「二人のラブラブパワーが邪神を吹っ飛ばすのを見たいアルから、付き合ってあげるネ」
リンメイの宣言に笑いが巻きあがる。
「ここまで一緒に来たのですから、やりますよ」
「僕も行くよ」
ヘンリーとラファエルもうなずいてくれた。
ありがたい。やっぱり一緒に戦ってきた仲間の方が、連携が取りやすいし、信頼しているから。
「おれも行こう」
意外なところから声が上がった。
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