そこでケチっちゃ駄目だ
亜里沙とヘンリー、どちらに加勢に行くか、二人の戦いを見る。
ヘンリーは敵の攻撃をガードしているがダメージは食らう。そのかわりほぼ転ばされると聞いていたラ・アディンの怪力でもヘンリーを地に這わせることはできないみたいだ。
対し亜里沙は攻撃をひょいひょいとかわしているが、きっと一撃を食らうと大ダメージになる。
ここは亜里沙がうまく敵の攻撃をかわし続けることを願いつつ、ヘンリーの方に行くか。こけないけれどダメージは食らってるし、な。
さらにロブルダークのロケットパンチがこっちに飛んできた。俺は回避できるがヘンリーはやっぱりガードして耐えている。こっちにきてよかったな。
「いいこと思いついたアル。ドドじいを霧化させてちょっと前に出てもらうネ。そうすればロケットパンチの攻撃目標になるけど物理攻撃無効でダメージないヨ」
「おっ、それいいな」
ヘンリーへの攻撃が減ってくれればってことでドドメスが霧状になって数歩分、前に進む。狙い通りロケットパンチの照準はドドメスに向いているようだ。
ラファエルの攻撃魔法がロブルダークに飛ぶ。亜里沙が相手にしているラ・アディンもダメージを食らった。
俺も『崩壊の赤眼』の追加スキル、致命の一撃でラ・アディンの急所を突く。
これでぐっと有利になった、と思ったら。
ラ・アディンの腕が亜里沙の肩を殴りつけた。悲鳴を上げて亜里沙が倒れる。追撃を食らうとやばいぞ。
「闘気を使ってでもかわせ!」
すぐに「りょーかい」っていつもの声が返ってくると思ったが。
「え、でも」
何を悩んでるんだ?
ラ・アディンの腕が亜里沙に振り下ろされる。
亜里沙は、闘気は使わずに転がって逃れようとするけど、腹にラ・アディンの腕がめり込む。
「亜里沙っ!」
ぐったりと横たわる亜里沙のそばに駆け寄った。
息はある。まずそれにほっと安堵の息が漏れる。
「リンメイ、ラファエル、回復頼む」
さらに亜里沙を攻撃しようとするラ・アディンを遮り、短剣を振るう。おまえの相手は俺だ。
致命の一撃を繰り出すには、こいつは隙のない動きをしている。亜里沙が立ち上がるまでけん制しておくか。
すぐにリンメイ達の回復魔法が亜里沙の傷をいやす。
相手をしていたラ・アディンを倒してヘンリーがロブルダークに向かって行く。ロケットパンチは狙い通り霧になったドドメスに飛んでいて、ダメージはない。
改めてリンメイナイス判断だったな。
「うー、いたたた」
魔法で回復した亜里沙が起き上がってくる。
「どうして闘気を使ってかわさなかったんだ?」
ラ・アディンを警戒しながら亜里沙に問う。
「この先で、みほちゃんと戦うでしょ? その時のために闘気を取っておきたくて」
そうか。江崎は、というより魔剣フェルデスの中に封じられている真祖には『封神の虹眼』のパワーアップバージョンで攻撃しないといけないからか。
けどなぁ。それで死にかけたら本末転倒なんだよ。
「今は闘気をケチるな。魔石で回復すればいい。足りなければ俺らのを回す」
「うん、判った。ごめん」
「こいつは俺がやる。亜里沙はヘンリーのところへ」
「りょーかい」
いつもの快活な声に戻った亜里沙が離脱し、ヘンリーに加勢に行く。
「待ってたわけじゃないだろうが、待たせたな」
開眼の短剣を握り直し、ラ・アディンに切っ先を向ける。
激しい頭痛を気合いで耐えて、ラ・アディンの腕をかいくぐって急所に短剣を深々と突き刺した。
ラ・アディンが消滅する。
ヘンリーと亜里沙がロブルダークを倒したのはそれから間もなくだった。
敵を倒して得た魔石を分配する。
まだ残っている罠を警戒しつつ、宝箱を確かめる。
中には、闘気回復の魔石がたくさんあった。
「よかった。これで亜里沙も闘気を気にせず戦えるな。無茶するなよな」
頭を撫でると亜里沙が嬉しそうにくっついてきた。
「そこ! ラブラブするなアルっ!」
リンメイに突っ込まれてしまった。
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