これが本当の致命の一撃
探索エリアにやってきた。先日戦った魔術師オルトの言葉が正しければ、このエリアを踏破すれば邪神“ディレク・ケラー”が封印されている場所へ到達できるはずだ。
それで、だ。
「探索を始める前に提案なんだが」
俺がみんなに声をかけると、みんなが俺をじっと見る。
「戦闘前にどう動くかは相談するけど、戦闘中はわりと個々で動いてたじゃないか。それはそれでいいんだけど、もっと自分の行動を事前に言葉としてみんなに伝えた方がいいんじゃないか、って」
もちろん戦闘中に悠長に話す時間なんかない。けれど単語だけでもいいから意思疎通を心がけた方がいい。
「特に魔法使い達は誰にどんな魔法やスキルを使うか、前で戦う俺らはあまり判らない。効果を見てから判断して動くより、知っておいた方がワンテンポ早く動けるし」
正直、後衛の判断ミスが戦闘全体に影響が出ることが多いと思う。もしも判断違いがあれば「駄目だ」と声をあげることができる。
ダンジョン終盤にして今更、なんだけど。そう思うとちょっと笑いが漏れる。
「いいネ。今までは声かけなしでうまくいってたアルけど。今回は大変だって言ってたヨ。連携大事アル」
「うん。僕もそれでいいよ」
ヘンリーと亜里沙もうなずいている。
「よし、それじゃ進むぞ。いつも通り、俺が先行する」
それぞれがアイテムや魔法で宙に浮く。地面に設置しているタイプの罠は回避できるし、空中にいると敵の攻撃をかわしやすいんだよな。
って思ってたら、空中に設置してるステルスな罠があった! 危なっ。『罠破壊』で綺麗に壊しておいた。
通路は左右と正面、三方向に別れてる。
「さてどこから行くか……」
「こういう時はやっぱり左手の法則ネ」
だからそれは迷路から脱出する時の手段で……。ま、いいや。
「それじゃ行ってくる」
みんなを待たせて左の通路に入る。わりとすぐに行き止まりだ。
床にスイッチがある。トラップはなさそうだな。どこかの扉が開くっぽい。
踏んだら――、爆発した! 罠発見失敗した! いってぇ!
「ちょ、あきちゃん、大丈夫?」
「まだ来るな。罠発動するっ」
言いながら『罠破壊』で壊す。
「早速声かけが役に立ちましたね」
ヘンリー、イヤミかよっ。
右の通路の先に本物のスイッチがあって、真ん中の通路の先の扉が開いた。
通路の先はまた三方向に別れている。
今度は左手のドアが閉まっていてどこかに開錠装置があるっぽい。
真ん中の部屋と右の部屋には魔物がいて、右の部屋はなんか空気がピンク色だ。あからさまな毒ガストラップだな。
「空気がピンクに見えるくらいの毒の部屋なんて嫌だよね」
「ピンクの部屋は後回しにしましょうか」
「その言い方だとお色気モードネ」
「魔物が?」
「それは嫌だっ」
ひとしきり笑って、さてどっちから行くかを話し合って、真ん中の部屋から、となった。
部屋の中にはロケットパンチの巨大魔物一体と、アディンの亜種だろうヤツが三体だ。
「ロケットパンチのがロブルダーク。パンチ三連続だって。攻撃範囲で一番遠くの相手なのは同じみたい」
撃って腕が戻ってを繰り返すのかな。
「アディンに似てるのはラ・アディン。殴られたらほぼ転ばされるくらい力強いらしいよ」
つまり殴られなければどうということはない、だな。
亜里沙が敵の情報を得ている間に俺はデータ収集器を敵に向けながら部屋の中をざっと見回す。
部屋は三十メートル四方ぐらいか。先に進む通路はなさそうだ。奥に宝箱らしきものがある。
「多分、罠もあるだろう。俺は罠を発見次第壊しながら手近な敵に攻撃する」
「それじゃわたしはロケットパンチに向かうよ」
「私は後衛に敵が向かわないよう足止めを」
「リンメイ達は基本的にロケットパンチの攻撃範囲の外にいるネ。魔法が届かなさそうだったらヘンリーさんと同じところに行くヨ」
「僕は範囲攻撃魔法メインで」
基本の狙いをそれぞれが告げて、「OK」とうなずき合う。
亜里沙が正面に突っ込んでいく。途中に氷結トラップがあるのが判ったからすかさずナイフを投げて破壊する。
彼女はそのままロブルダークの手前にいるラ・アディンと交戦だ。
ヘンリーは右手前方のラ・アディンに接敵する。そっちには罠はないな。
なら俺は残った左前方に向かうか。
「世界を救う力となれ。『崩壊の赤眼』」
この力が世界を救う一助になればと願いを込めて、スキルを発動する。
赤く光るラ・アディンの弱点に、開眼の短剣を突き立てる。
……頭が、ずきんと激しく痛んだ。HPを持って行かれるような感覚もする。
と。
ラ・アディンが悲鳴を一つ残してざぁっと崩れ去っていく。
「敵が即死したヨ。くろちゃき、すごいネ!」
いわゆる「クリティカルヒット」ってやつかな。
亜里沙の『封神の虹眼』が使いこなすことでパワーアップしたように、俺の『崩壊の赤眼』も使い慣れてきたことで新たな力を引き出したのかもしれないな。
HPが減るのは文字通り痛いが、敵が多い時なんかはありがたい。
よし、この調子でさくっと魔物を倒していくぞ。
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