File14 統べる者
邪神を封じる力の使い方
ダンジョンから戻った次の日。
今までは半日から一日くらいの休憩をもらっていたが、“ディレク・ケラー”の復活まで早くてあと三日とあってはそんな悠長なことは言ってられないだろう。きっと朝食を摂ったらすぐに出発だ。
俺は亜里沙に作ってもらった朝食を食べてるが、ラファエルは静乃がまだ部屋から出してもらえないってことで一人飯に逆戻りしている。
そういや、あいつ富川さんや月宮にきちんと詫びたのかな。見てる限りでは何も言ってなかったが。
ご飯を食べ終えて、ラファエルの部屋に行く。
「何か用?」
「おまえ、富川さん達に詫びたのか? 魔導書盗られて作戦自体にすごい影響出てしまってるんだぞ」
「あ、うん。後でちゃんと謝っとくよ」
まだだったのか。しかも俺が指摘するまでそんな気がなかったかのような言い方……。
「おまえなぁ……。大体、あれほど気をつけろって言っておいたのに、人の目のない部屋で出されたものを食って眠らされるなんて――」
ついつい説教モードになってしまう。
こいつを見てると危なっかしいんだよな。
ラファエルはさすがに返す言葉がないらしい。黙って俺の言葉にうなずいている。
「そういや、おまえに聞きたかったことがあったのを思い出した」
「え、何?」
次はなんだって感じでビビってる。
「昨日、親父さんの魔法を止め損ねてたけど、……全力、出したんだろうな?」
その前の時は闘気をケチって負けたからな。まさかとは思うけど。
「昨日は全力だったよ」
「そうか。親父さんの方が純粋に強かったってことだな。……俺の親父も強いからお互い親父を超えるのは大変そうだな」
肩をすくめると、ラファエルも似たようなしぐさをした。
「なんだかんだで、おまえの魔法もすごい頼りなんだから、頼むよ」
肩をぽんと叩くとラファエルは驚いてる。俺がおまえを頼りにしてるなんて言われるとは思ってなかったってか? まぁどっちかというと連携に関してはリンメイの方を当てにしてるんだけど、だからといってもう俺らのパーティはラファエルなしではきついのも確かだよ。
「多分、あとちょっと休憩したらダンジョンにもぐることになるだろうから、準備しとけよ」
「うん。その前に富川さんのことろにいっておくよ」
微笑を返して、部屋を辞した。
今まで、ラファエルは遊撃手として扱ってた。どうしてもって時はこう動いてくれって言ってたけどそれもラファエルがその通りにするかどうかは彼に任せている、というか強く言っても聞いてくれないだろうって感じであきらめてた。
もっと、連携を確かなものにするよう、改めて話し合う必要があるかもしれないな。
それから一時間後、俺らは司令部に集められた。
富川さんと月宮と、もう一人、女性がいる。……あれ? あの人、確か亜里沙の『封神の虹眼』を教えてくれた修行の時の……。
「こんにちは聖さん。『封神の虹眼』を使いこなせているようで何よりです」
やっぱり修行の人だった。
「いよいよ邪神との戦いが近づいていますね。『封神の虹眼』について一つ、伝えておきたいことがあって来ました」
修行場の管理人、
真祖のような「神」、つまり世界意思に近い存在と戦う時に相手を無力化できるが、闘気をかなりたくさん使うらしい。闘気が足りなければMPや、HPまでもを消費して攻撃を繰り出さなければならない。まさに命を削る技だな。
俺の『崩壊の赤眼』も使い続けるとひどい頭痛でHPが減っていくし、魔眼って言われている技って、そういうのばかりなのかな。
亜里沙は緊張した顔で華鈴さんの説明を聞いている。この技の使い方を伝授されるってことは「勇者」として「邪神」を討つのがいよいよ彼女だと認められたようなものだもんな。そりゃ緊張もするだろう。
華鈴さんの説明が終わったら、いよいよダンジョンアタックだ。
「美坂からあんた達に伝言よ。今回の探索は大変危険なものになります。どうか気をつけて。だそうよ」
「どう危険なのかは……」
「具体的には聞いていないわ。ただ、強大な力と強い因縁のようなものを感じる、と」
因縁か。俺にとってはミリーだし、きっと亜里沙にとっては江崎だろう。
亜里沙を見る。彼女も俺をみて、二人でうなずいた。考えていることは同じだろう。
「私の兄ですかね」
ヘンリー! ここでボケないでくれっ。
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