まさに孤軍奮闘
残る通路の先に扉がある。罠はない。
いつも通り俺が先に一歩部屋に入る。
やたら広い部屋だ。今俺がいる左手に数十メートル。前方にも二十メートルある。
目の前の床にスイッチがあって、それを踏むと扉が閉まり罠が作動する仕組みのようだ。罠は……、ローラータイプ、って、この広い部屋に? 飛んでるから発動しないけど。
「どんな感じアルか?」
調べて判ったことを説明する。
「あと、部屋の奥に敵がいる」
七体いる。さっき戦った両手が剣のアディンとその亜種みたいなのが二体ずつ、アメンボみたいなのが二体、魔術師っぽいのが一体。
データ収集器を向けて敵の構成を伝えた時。
敵がこっちに向かって進み始めたと思ったら、ドオォン! と大きな音が背後でして、みんなとの間の扉が無情にも閉じた。
……えっ?
恐る恐る背後を見る。
部屋をふさぐように、ローラーが落ちてきてた。
うん、判ってた。確認したくなかったし今も認めたくないけれど。
これは、俺だけ、敵の方に逃げるしかないってやつだな。
「ローラーがっ。敵の方に行くっ。壊してくれ」
すでに転がり始めたローラーから逃げるように敵へと走る。
E-フォンでデータを検索する。
アディンの亜種がル・アディン。攻撃方法は同じだけれど能力的にアディンの強化版みたいな感じだな。ちなみに黄色の模様の部分が青になってる。
アメンボタイプがデスガンナー。物理攻撃完全無効だとっ? でも攻撃態勢に入っている時は通じるっぽい。攻撃は、レーザーで狙い撃ちか。集中している時に攻撃すればいいってことか。
魔術師はケイオスマジシャン。『爆炎』『氷牙』が攻撃魔法。自分を中心に回復魔法も唱える。『氷牙』の方が攻撃力が低いが凍り付かされる可能性があってまずそうだ。
みんながローラーを破壊するまで、どうにか持ちこたえないといけない。
マジシャンが早速『爆炎』を唱え始める。ガンナーも俺に向けて集中を始めた。
あんまり前に突出したらアディン達にも殴られるし、後ろに下がりすぎるとローラーに轢かれる。
みんなを信用して、耐えるしかない。
『爆炎』が俺の前で炸裂する。炎に巻かれ、痛みが体じゅうに走る。続けてガンナーのビームが飛んできた。
HPが一気に半減する。『治癒促進』でどうにか持ちこたえる。
背後で、ガンガンとローラーに攻撃を加えている音がする。
頼むよ、俺が倒れる前に破壊してくれよ。
アディンとル・アディンもやってきて剣を振り回す。頭に、肩に、胸に、腹に、振り下ろされる刃を体をひねり、かがみ、のけぞってかわす。
その間にマジシャンとガンナーが攻撃態勢を整えてる。
マジシャンの『氷牙』はまずい。凍り付いて行動が阻害されたら一方的に殴られて終わる。
「何者も俺を見つけること能わず、『霞隠れ』」
息を殺し、気配を消して体を景色と同化させる。
敵は俺を見失った。魔法と射撃がキャンセルされるまでじっとこらえる。
「動きを鈍らせろ、『鈍足の枷』」
リンメイが魔法をかけて、ローラーの転がる音が鈍くなった。そこへ皆が一斉攻撃を仕掛けている。
心強い。
あともう少しだと信じて、俺も攻撃に転じるか。
ちょうど敵が連なっている。敵の攻撃は一通り終わった直後で、ちょっとした休止状態。
チャンスだ。
右腕を掲げ、集中する。
敵が、じりじりと動き始める。
焦るな、大丈夫だ。十分に炎を練り上げろ。
アディン達が剣を振り上げる。
今だ。
「業火にのまれろ、『炎竜波』」
右手の炎を、撃ちだした。
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