不機嫌勇者と死亡フラグ、さらに
捜索三日目の朝。
「飽きてきたアル。川をせき止めてもらえば見つけやすいんじゃないアルか?」
前半のぼやきはともかく、後半はまぁ使えなくもない手だとは思うが。
「せき止める理由が必要だろう。なんて説明するんだ?」
「んーっと、オバケが出たから」
「マトモな答えを期待した俺がバカだったよ」
ということで、今日も今まで通り地道な捜索をして変異体を見つけたのだが。
変異体以外にも、招かれざる客がやってきているみたいだな。
タニシが二体と、蜂が二団、それ以外に、迷彩仕様のパワードスーツを着たヤツが五人ほど。
なんだよあれ。まだ遠くでこっちを見ているだけだが、仕掛けてくる気満々なのが判る。
「どういう戦法でまいりましょうか」
ヘンリーの問いかけに、あぁ、そうだな、と応えて考える。
「僕が蜂に魔法攻撃を仕掛けるから、それまでは手出ししないでほしいかな」
ラファエルが言う。あいつら回避能力高いからな。ラファエルの命中精度をあげた魔法で落としてもらうのがいいだろう。
「俺はあっちを警戒しとく」
パワードスーツの連中をちらと見やる。ヘンリー達は声なくうなずいた。
「リンメイはサポートに徹するアルよ」
戦術はそんなもんか。
気になるのは亜里沙が不機嫌そうで、一言も発していないことだが……。
蜂が近づいてきた。
ラファエルの言う通りにここは待機して――。
えっ? 亜里沙が一団に攻撃を仕掛けた。回避されて、一団はブォォーンと羽音を響かせて遠ざかる。
「あぁっ、どうしてっ」
ラファエルの悲鳴に近い声。そうだよなぁ。彼の魔法で二団まとめてやれたのに。
「……知らない。わたしは目の前の敵を倒すの! 複雑な事言わないでよ」
おいおい。
「複雑なことをしないと勝てないこともありますよ」
やんわりとお説教しながらヘンリーがタニシに攻撃を加えてる。
俺の銃撃とラファエルの魔法で、蜂の一団とタニシが一匹、行動不能だ。
「『裁きの光』の範囲内なら飛んで行ってしまったのも倒せたのに」
ラファエルがぶつぶつと文句を言っている。
「まだ言ってるの? 誰がやっつけても一 緒でしょ?」
「亜里沙、もうよせ。君が先走って作戦が狂ったのに違いはない」
俺がラファエルの肩を持ったのが気に食わなかったのか、亜里沙は露骨にむっとした顔になった。
一体どうしたってんだ?
今は戦闘中だ。話はあとでゆっくり聞くとして……
“チャンスだぞ、敵と戦っている”
“どうせ生きては帰れないんだ。ここで混乱に乗じて攻撃を仕掛けよう”
パワードスーツ達が英語で話しながらこっちに向かってくる。
帰れない、か。アメリカ軍の残党だな。
“帰れないなんて馬鹿なことを言うな! おまえは帰らなきゃだめだろう。もうすぐ結婚するんだから”
“それを言ったらおまえだって、病気の母親を残して来てるじゃないか!”
死亡フラグ満載で近寄ってくるなよ……。
連中の言葉を日本語に訳して亜里沙とリンメイに伝えてから、連中に言い返してやった。
“帰れないなら、こっちにとどまってれば? 婚約者とか身内は呼び寄せたらいいじゃないか。言っとくけど、闘う気なら手加減しないぞ”
言ってみたけど、聞く耳持ってないな。もう顔が「連中(=俺ら)を
警告は、したぞ。殺す気はないが、痛い目見てもらおうじゃないか。
手加減して『炎竜波』で全員まとめて行動不能、といったところかな。
が、さらに闖入者が現れた。
『聖亜里沙! あなた、勇者候補なんですってね。その実力、見せてもらおうじゃないの!』
拡声器の声?
百メートルほど離れた先に、拡声器を持った十代半ばぐらいの女の子がいる。隣には、黒い物体が。……でかい昆虫? さらにその後ろには変異体の蜂が四団もいやがる。
「使役してるのか?」
つぶやくと、ヘンリーがうなずいた。
「倒した魔物を使役できる能力を持ったいわゆる『
何なんだ、あの子は。どうして亜里沙に?
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