File10 変異生物騒動
けだるい体に次の任務
ダンジョン探索の次の日。
普段の俺は寝起きは悪くはないが、さすがに昨日の探索は今まで以上に疲れたからいつもより遅く起きて活動を始めた。
身支度を整えて、さて今日は何か仕事はあるだろうか、さすがに今日はダンジョン探索は休ませてほしいかな、と思っていると。
Eーフォンにメッセージが届いた。月宮からの招集だ。
やれやれ連続かとけだるい体を何とかなだめるように動かして月宮の部屋に行く。
……あれ? 他のみんなは?
「あんただけなの? 他の連中は?」
「グループメッセージだったから特に声はかけずにきたけれど……」
「あんた達に至急、行ってもらいたいところがあるのよ。すぐに呼んできなさい」
この言い方はダンジョンじゃないな。
とにかく月宮の機嫌が激しく低下する前にみんなを集めないとな。
外に出るとラファエルとヘンリーがいた。先に部屋に入っておくように言って、リンメイと亜里沙を起こしに行く。
「起きろ。招集だ」
「もう寝かしといてアル」
「月宮に殴られたいなら、好きにしろ」
亜里沙の部屋の前で同じように声をかける。
「はぁーい、今行きます~」
声が明らかに寝ぼけている。
それでも部屋から出てきた亜里沙はきっちりと身なりを整えている。ちょっとアホ毛になっている亜里沙を想像して、それはそれで可愛いかもとか勝手に思っていたが期待は外れたみたいだ。
「ほら、行くぞ」
「はぁーい」
凛とした亜里沙もいいけれど、これはこれで……。
いやいや、月宮はそんな広い心の持ち主じゃないだろうから、しっかり起こしておかないと。
「亜里沙、起きろ」
ぺしっと頬を両手で挟む。
亜里沙の顔が、かぁっと赤くなった。
「あっ、ああぁぁ、あきひこくんっ!?」
「起きたか。そんなに強くたたいたつもりはないけど、痛かったならごめんな」
言って、踵を返して月宮の部屋に向かう。
後ろから、ずっと赤い顔のままの亜里沙がついてきた。
五人揃って月宮の部屋に集合する。
「やっと来たわね。ちょっと強敵にあたったからってだらけすぎなのよ」
厳しい一言だが、実際そうだよな。一刻を争うのだから休みたいと思った自分を反省だ。
「あんた達に行ってもらいたいのは、この前テ・ミュルエの変異体、タ・ミュルイが出没した川よ」
どうやらウィルスの影響を受けた生物がいるらしい。数種類確認されていて、すでに現地に駐在しているイクスペラーがある程度倒したらしいが、どうしても倒しきれないのがいるんだそうだ。
「近隣の街にはまだ近づいていないけれど、活動範囲を広げつつあるということで、あんた達が行って駆除してきなさい」
そういうことなら、急がないといけないな。
けれど、野外での活動となると、あんまり慣れてないんだよな、俺ら。
「ジョージを連れていっていい? 彼なら野外活動のノウハウがありそうだから」
「あいつについてはわたしはノータッチよ。富川に聞いてみたら?」
「判った」
みんなで顔を見合わせて、うなずいた。
早速向かおうと部屋を出るが、リンメイが月宮に「あんたちょっと残りなさい」と捕まっている。
なんだ? 特別任務? まさかリンメイに?
気になるが、ジョージの事で富川さんに話をしないとな。
「あんた、ダンジョンに美坂が行った時に、『ばれなきゃいい』って言ったそうね?」
……あ。こりゃリンメイ、死んだな。
あの時は俺ですら本気で不快に思ったくらいだ。美坂を大切に思っている月宮には許せない一言だろう。
ドアを閉めて富川さんのところに向かう後ろで、「アイヤ~!!」と絶叫が響いた。
中華娘を演じられているならまだ大丈夫なんだろう。
放っておいて、富川さんの部屋に向かった。
「え? ジョージ君を? 今別の任務についてもらっているからなぁ」
「それなら仕方ないですね」
「ごめんね。変異体の駆除、よろしく頼むよ」
「判りました」
任務中かぁ。メッセージだけ出しておこう。『手が空いたら俺達の仕事も手伝ってほしい。これは個人的なお願いになっちゃうけど』っと。
リンメイが月宮の部屋から出てきた。額の中央が腫れてる。強烈なデコピンでも食らったか。
「ひどいアル~! チクったの誰アルか」
「チクる意図はなくても美坂さん本人が月宮に話したんじゃないか?」
「痛いヨ、駆除になんか行けないアル」
「自力で治せるだろう」
ぶーたれているリンメイを引きずって、俺らは問題の川まで行くことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます