予想通りの大苦戦

 扉を開けて俺と亜里沙が突っ込む。残りの三人は入口付近で固まって防御態勢だ。


「新しいのは赤いメカ忍者だけよね?」

「そうだな」


 亜里沙がE-フォンで敵の情報の検索だ。


「名前はシノドレット。青いのより攻撃力が高いよ。あと、近くの仲間の防御力を上げたりしちゃうって」


 ただでさえロボは硬いのに、厄介だな。


 攻撃方法は青いのと変わらないみたいだから、さっきの作戦は変更なし、ということで。

 いかに亜里沙と俺が敵を早く減らせるかがカギになってくるな。少々MP消費の効率が悪くてもチャンスがあれば『炎竜波』を使っていくか。


 さっき一人で突っ込んだ時に攻撃を仕掛けたロボ達に再び『死の舞踏』で切りかかる。早速一体が崩れ落ちた。


 幸先いいスタートになったが……。


 円盤が俺に照準を合わせて集中している。こいつの攻撃は魔法ダメージだから当たれば魔法抵抗の低い俺には結構痛い攻撃になる。


 ロボットどもは俺や亜里沙を無視してヘンリー達のいるところにビームを雨あられと撃ち込んでいる。あの三人の中で一番魔法抵抗の低いヘンリーが特に集中攻撃を食らっている。リンメイとラファエルの回復魔法でどうにか倒れないでいるが、かなりきつそうだ。


 しかも赤忍者ロボが自身と周りのロボの防御力をあげるものだから亜里沙の攻撃がなかなか通じなくなってきた。俺は『崩壊の赤眼』のおかげで敵の弱点が目に見えるからまだマシだが、防御のあがったロボの大弱点はかなり小さいので攻撃をきっちりと当てられない。


 『炎竜波』を放つべきか? だがその前に円盤をどうにかしないと技に集中している間に攻撃を仕掛けられたら、下手すると一撃で倒れる。


 まずは円盤を落としにかかる。俺が攻撃を仕掛けると雷撃の集中を解いて逃げ回るが、素早さなら俺の方が上だ。ちょっと手間取ったが二機とも粉砕した。


 その間にヘンリーのHPが乱高下している。彼の顔色もかなり疲労が色濃いな。


 亜里沙もスキルを駆使してロボに攻撃してくれているけれど、やっぱり今一つダメージが通っていないようだ。彼女に攻撃が向くことがほぼないからその点は個人的感情では安心だが。


 さて、俺に攻撃を向けてくるのもいなくなったから『炎竜波』を放つか。今の位置取りだと忍者ロボとダルテット二体が攻撃対象にできる。

 右腕を構えて集中……。


 攻撃目標にしているダルテットが二体、こっちを向いた! 俺が大技を仕掛けようとしているのを察したかのように、連中もビームの構えだ。


 いつもなら集中を解いて回避するところだが、ヘンリーがかなり参っているのを見ると、俺も少しリスクを背負った方がいい気がする。

 連中の攻撃で俺が倒れたらパーティにとって結構不利に傾いてしまうが、一か八かだ。


 ダルテットのビームが飛んでくる。体を焼かれる痛みに耐えながら、俺は技に集中する。


 よし! 勝ったな!


「業火にのまれろ! 『炎竜波』」


 右手から放たれた炎の竜がロボ達に絡みつく。ダルテット二体が崩れ落ち、メカ忍者は動きを拘束される。


 今が絶好のチャンスとばかりに亜里沙とヘンリーの攻撃でメカ忍者も行動不能になった。


 残るはダルテット一体だ。

 ヤツは破れかぶれのようにヘンリーに突っ込んでいく。最後のあがきに、しかしヘンリーも限界を超えたようで、攻撃を食らって膝をついた。


「あと一体、お任せします」

「あぁ、任せろ――」

「だめアル、ヘンリーさんが動けなくなったらリンメイ達が狙われるアル」


 リンメイがヘンリーに回復魔法をかけようとしている。


「おまえ鬼か? 散々守ってもらってたんだし、休ませてやれよ」


 だがこの判断が、まさかの結果につながるとは思わなかった。


 亜里沙の攻撃をかわしたダルテットが、俺にビームを撃ってきた。

 さっき『炎竜波』を放つ時にロボ達の攻撃をそのまま受けてたからHPがかなり減っているんだった。


 ならば回避――。

 痛っ、『崩壊の赤眼』の副反応の頭痛がここで……。


 ダルテットのビームが胸に直撃した。

 全身に痛みが走って、床に倒れる。あ、まずいな。


 左目が……、恐ろしいまでに痛い。また『崩壊の赤眼』がパワーアップしたのか。


 意識がもうろうとする中で亜里沙が奮闘する声が聞こえる。どうやらロボは粉砕されたみたいだな。


「章彦くん、今回復するよ」


 耳元で亜里沙の優しい声がする。傷を癒す優しい炎にふわりと包まれて、どうにか意識がはっきりしてきた。


「ありがとう亜里沙、もう大丈夫だ」


 あとは自分で『治癒促進』をすれば問題ない。

 十分に回復してから、部屋の奥に目をやる。


 モニュメントが稼働しているのを見て取って、ほっと息をついた。

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