楽勝な敵と、漢探知

 準備ができたら、ダンジョンにもぐる。

 このエリアも機械文明みたいな内装になっている。


 ここを作ったヤツはもういないんだろうな。なにせ、一万年前から邪神が復活しないようにしているって話だったし。

 だったら、ここの機械は誰が動かしているんだろうか。

 プログラムが壊れていないから自動で動き続けてるってことだろうか。


 そんなことを考えながら、最初の部屋の罠を探す。

 特にこの部屋には何もない。


 みんなに待ってもらって、先の通路を調べに行った。

 マイン型のトラップがある。デスローラーと呼ばれているやつだ。スイッチを踏むとでっかいローラーが転がってきて通路にいる者を踏み潰すって罠だ。


 けれど俺も飛行状態で、トラップを踏むことはない。

 一応解除はしておいて、次の部屋に続く扉も調べる。


 罠はない。ということはきっと敵がいるな。

 みんなを呼びよせる。


 ……なんでリンメイは菓子を食ってるんだ? 待機しておいてとは言ったけど寛げと言った覚えはないぞ。ってかよくダンジョンで菓子なんか食おうって気になるな。


「だっておなかすいたアル」


 あっけらかんと言う。


 ……まあいい。いちいち気にしてられん。


 ドアを開けると、前に見たロボット、ガルタットに似たヤツと、円盤が二機だ。

 俺がデータ収集器を敵に向け、亜里沙がE-フォンで情報を検索する。


 ロボットはダルテット。ガルタットの上位版みたいだな。魔法攻撃への抵抗力が高いらしい。

 円盤はカルロイン。電撃攻撃をしてくるようだが、敵を狙う集中時間が伸びるほどに命中精度と攻撃力が上がるようだ。


 データが揃ってきているということは、俺らが修行に行っている間に他のパーティが先に進んでいるってことかな。

 どこのパーティが最奥に一番乗りでもいいから、ミリー達より早く進まないと。


 前のエリアで戦った敵と似ているということで、前と同じように俺が先に出て敵を引き付け、皆が後ろから攻撃する。


 新しく覚えたスキル『死の舞踏』で周りに集まってきた敵に斬りつける。無差別に攻撃するから味方が近くにいる時には使えないけれど、こういう場面ではすごく有力な技だ。


 俺がダメージを与えた敵を『衝撃波』を使って亜里沙とヘンリーが打ち倒していく。ラファエルの魔法も飛んできた。


 こうして、あっさりと敵を倒すことができた。

 魔石を分けて、部屋を調べる。特に他には何もない。


「このエリアも楽に進めそうアルね」


 そうだと、いいんだけど。


 次の部屋には特殊なギミックが施されていた。

 飛行禁止と、探索スキル禁止だ。

 もう絶対マイン型のトラップがありますと宣言されているようなものじゃないか。


 地上から少し浮いていたスノーボードが、ぺたんと地面に降りてしまう。

 片足の固定を外して、スノボの連中がやるようにボードを引きずって歩く。


「ボード傷ついちゃうアルよ」

「裏面の文字が剥げてしまいますよ」

「そんなもん入れてねぇよ」

「注文してから時間がかかっていたようなので、黒崎参上! などと入れてもらっているかと思いました」


 ヘンリーが真顔で言うから冗談なのだろうが本気で言ってるように聞こえる。

 苦笑を返して、部屋を見回す。


 右の壁に次へと進むドアがある。トラップがあるとするならドアの近くだろうな。


「しかし探索スキル禁止となると。俺でも安全に見つけるのは難しくなってくるな」

「それじゃ、今度こそ歩いて回ってみるとか」


 ラファエルが笑っている。そういや前のエリアの爆弾スイッチてんこ盛りの部屋でも似たようなことを言ってたな。


「俺はしないぞ。言い出したあんたがやれ」

「判ったよ」


 えっ? てっきり断ると思ってたのに。仕方がないから危険を覚悟で調べに行こうと思ってたんだが……。


 ラファエルが部屋に入って行く。

 よほどのダメージでなければ防御魔法でどうにかなるかもしれないが。


 なんて考えてたら、部屋の中央付近で、派手に爆発した!

 もうもうと上がる炎と煙の向こうで、ラファエルが手を振っている。


「ここ、罠があるから解除よろしくね」


 いや、見てたら判るって。


 それにしても愉快なことやってくれるな。なんか変なもんでも食ったのか?


「止めた方がいいのか? あれ」

「面白いから見ていようよ」


 つぶやいたら、亜里沙に返された。


 そうだな。ダメージも大丈夫っぽいし、おとこ探知に任せておくか。

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