File09 恐ろしき司令塔
どうしてそれでイチコロなのか
夕食時、ささやかだけれど亜里沙の誕生日パーティをした。
特別な料理もケーキも用意できなかったけれど、亜里沙は喜んでくれているみたいだ。
「ひじりんおめでとう。急だったからプレゼントはこれアル」
「えっ? プレゼントあるの? ありがとうリンメイちゃん」
平べったい箱だが、何が入ってるんだ?
亜里沙が箱を開けると……、白い能面みたいな仮面!? どっから用意した?
「これでくろちゃきもイチコロネ」
俺がそれに萌えるとでも?
亜里沙も律義につけてるんじゃない。思わず笑っちまった。
「お似合いですよ」
「そうかな?」
ヘンリーとラファエルも笑っている。
そんな楽しいひと時は、穏やかに過ぎていった。
次の日。
今日はダンジョンにもぐる日だ。それぞれが準備を整えていく。
ポーションなんかの補充をしてたら、ちょっと前に注文しておいたフライトアシストが届いたと声をかけられた。
スノーボードをちょっと改良したものに飛行の付与魔法をかけてもらっているものだ。
代金を支払って、外に出て早速乗ってみる。
おっ、こんな感じ? でもなんだかちょっと不安定だな。
「章彦くん、フライトアシスト買ったんだね」
「あぁ、やっと届いた」
「よかったね。あ、重心のかけ方は、もうちょっと後ろにね」
言われた通りに少し体を後ろにやると、安定してきた。
「サンキュ。これでダンジョンのマイン型トラップは心配ないな」
俺が飛べるようになったからパーティの全員に飛行手段が備わったことになる。床に仕掛けるタイプの罠は、これで脅威ではなくなった。
そんなやりとりをしていると、月宮がやってきた。
「ちょっとあんた、来なさい」
亜里沙の腕を掴んで引っ張っていく。
「おい、何するんだ」
文句を言いながらついていく。
月宮は俺を見やったが特になにも言わず、亜里沙を建物の間に連れ込んだ。
「パーティの中ではあんたが一番話が判りそうだから言っておくわ。今度、美坂がついて行っても、何もさせずに本部に戻しなさい。絶対に『崩壊の赤眼』を使わせるようなことはしないで」
亜里沙の襟首をひっつかんで月宮がずいと顔を近づける。
かわいそうに、亜里沙はガクブル状態だ。
おい、ちょっと脅しすぎだろ。
割って入ろうと思ったが。
「あの子の寿命はあと数年もないの。命を削るスキルを使うことで残り少ない寿命を更に短くすることになるんだから」
月宮の顔が切なげに歪んだ。妹を心配する姉のようだ。
そんな顔を見せられちまったら割り込めないな。
しかしそういうことだったら俺に言えばいいじゃないか。開眼の短剣を持ってるのは俺なんだし。
判ったわね、と念押しをして月宮は亜里沙を放し、立ち去った。
亜里沙はしばらくの間、ガクガクブルブル震えていた。
よしよしと頭を撫でてやった。
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