彼なら突破しかねない

 次の日、改めて月宮のところにパーティ揃って出向いた。


「あんた達にもこれを渡しておくわ」


 月宮がテレビのリモコンみたいな機械を差し出してくる。


「これは向けた相手の身体的なパラメータを読み取るものよ。ただデータを解析するのに少し時間がかかるから、その場で知ることはできないけれど。解析済みのデータは今まで通りEーフォンから閲覧しなさい」


 つまり後進のパーティの戦闘に役立つってことだな。

 しかし、いろいろと開発されてんだな。


「俺が先に入ることが多いからこれは俺が持っておく。Eーフォンのデータ閲覧はヘンリーか亜里沙が頼む。後ろの二人はまず補助魔法だし」

「じゃあ閲覧はわたしがやるね」

「聖が無理な時は私がやりましょう」


 そんな話をして外に出ると、レッシュがきょろきょろしてる。


「あ、いたいた。えーっと、どっちがヒジリでどっちがリンメイだっけ?」

「わたしが聖アル」


 リンメイのおふざけに亜里沙が「ちがーう」と頭をはたいてつっこんだ。


「あー、章彦のそばにいるのがヒジリだな」


 レッシュがにやっと笑ってる。


りょうから伝言だ」


 一瞬誰だと思ったけど、ここの最高責任者、富川とがわさんか。


「パワーアップの特訓を受ける気があるか、だって」

「どうして亜里沙とリンメイだけなんだ?」

「ヒジリは闘気を使った技の習得で、リンメイは富川家の式神を貸し出すための儀式、らしいぞ」


 なるほど、それだとこの二人だけなのは納得だな。


「ふつーの訓練ならさせてもらえるんじゃないかな」

「だったらやってみたいな」


 俺の言葉にみんなうなずいてる。


「判った。亮に言っとく。これからもぐるんだろ? 頑張れ」


 レッシュは手をひらひらっと振って離れていった。

 それじゃ、ダンジョンに向かうとするか。




 先のエリアに行くと、今までと違って明らかに人工的な空間になっていた。

 壁も石とかじゃなくて、光るタイルをはめ込まれていたり、もっとしっかりした素材だったり。


「いよいよ、人の手で封印されてるって感じになってきたね」


 亜里沙がつぶやいた。


 いつも通り、俺が先に罠とかを調べにいく。

 入ったところはいきなり部屋になっていて、正面にレーザーフェンスが二本、左右の壁に扉がある。


 なんか、探索の初期の方で見た構図だな。あの時は、レーザーフェンスだけ人工物で浮いてた感じだけど、この部屋なら自然に見える。


 俺が部屋を調べている間に、亜里沙がフライングアシストを装着して、ヘンリーとラファエルが『飛行』の魔法を発動させた。

 俺のフライングアシストも早くできないかなぁ。


 おっと、探索探索。

 この部屋には罠やアイテムとかはなさそうだ。


「あのフェンス、飛んで超えることできないかなぁ。隙間を抜けるとか」


 ラファエルがつぶやいている。


「見えてるのは肩ぐらいまでの高さだけど、通行阻害の効果は天井まで張ってるよ。HPすごいあるヤツなら無理に越えられなくもないけど」


 レッシュが強引に突破しているのを想像して、笑みが漏れた。


「前のパターンと同じなら、左右に進んだどこかにスイッチがあるのよね」

「そうだな。まずは右へ行こうか。リンメイ、罠に特攻するなよ?」

「もうしないアルよー」


 一か月も経ってないのに、すごい懐かしいな。


 右の扉の罠をチェックして、開けた。

 てっきり通路だろうと思っていたら、部屋だった。


 四隅に見るからにロボットなフォルムのヤツが四体、停止した状態で佇んでいる。

 ただのオブジェ、なんてことはないだろうな。敵か、罠か。


 リモコン型データ収集器を向けると、ロボットが起動した。これだけで敵対行動と取られるのかっ。


 同時に亜里沙がEーフォンのデータベースにアクセスした。


 いきなり戦闘、だな。

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