このままの調子ならいいが

 亜里沙が検索をした結果、ロボットの大まかなデータが判った。


 名前はガルタット。腕を振り回して攻撃。離れた敵にはレーザーを飛ばしてくる。

 一人に攻撃を集中してくるという特徴がある。

 この深さまで来られたパーティなら問題なく倒せるであろう相手、とも書かれているらしい。


「ふぅん。だったら俺が一歩前に出て連中の的になるから、みんなは後ろから攻撃を飛ばすといい」


 ヘンリーは剣から衝撃波を飛ばせるようになったらしいし、亜里沙も『火球』の魔法を会得したらしいから、ちょっと離れたところからでも攻撃できるだろう。


 ってことで二メートルほど前に出て、部屋の対角線上にいる一番遠いヤツに銃を撃つ。

 狙い通り四体のロボット全部が俺めがけて滑るように動き始めた。


 が。


「章彦くん、頭の上に――」


 亜里沙が言うと同時に、頭上に出現したらしい何かが爆発した。思わずぎゅっと身を縮める。


 ……別に、なんともないが……。


 床を踏むと発動する、いわゆる「マイン型」のトラップか?

 敵はまだ到達してない。床を『罠探知』で調べてみた。


 混乱の機雷。さまざまな効果があって、抵抗に失敗するといろいろと不都合なことがあるらしい。

 何をしていいのか判らなくなって動けなくなったり、一番近い目標にやみくもに攻撃を仕掛けたり。一番混乱すると、攻撃の届く目標に手当たり次第に最大級の攻撃を仕掛けるとか。


 つまり俺がめちゃくちゃ効果を受けてしまうと『炎竜波』を仕掛けるってことかっ。そりゃまずい。


「解除したいが今は無理だな。やっぱりみんなはその位置から攻撃してくれ」


 ――戦闘は、楽だった。

 連中の攻撃は俺の回避能力ならばやすやすとかわせるものだった。俺がきっちりと「囮役」ができたことで後ろのみんなが攻撃に集中できた。

 なにより、ガルタットが攻撃を受けたらすっ転んだのが大きかった。連中、ろくにこっちに攻撃できてない。


「人造人間に比べてなんて楽アルか」

 リンメイがうきうきとしている。

「あんな戦闘が続いたら身がもたねぇよ」

 つっこみながらも、リンメイの感想には同意しかない。


 トラップを発見、解除しつつ部屋を見て回った。隅っこにMP回復パネルと、古ぼけた宝箱があった。今までの木製の物じゃなくて宝箱まで金属製だった。

 中には籠手が一そろい。


「どれどれ……。『無尽つくなの呪法』。式神の戦闘能力があがる……、か。リンメイ用だな」


 富川さんのところから式神を借りる儀式の話もあるし、ちょうどいいな。


「今は単純に防具としてつけとくアル」


 リンメイが籠手を装備して、うんうんとうなずいてる。


 それじゃ、先に進むか。




 先に進む扉の先は細めの通路になっている。

 警報機なんかの探知系トラップも解除しておく。

 次はどんな部屋だろう、と思ってたら。


「……行き止まり」


 床に、赤いスイッチがある。

 ひょっとして、こっちはこれで終わり?

 スイッチを踏んで、みんなのところに戻る。


「えっ? もう終わり?」

「多分。最初の部屋に戻ってみよう」


 予想通り、赤のレーザーフェンスが消えている。


「このエリア、楽勝じゃないアルか?」

「さて、どうだろうな」


 右が楽だったからって左もって保証はない。楽観はしない方がいい。

 けど、そうだな。踏破するのには楽な方がいいな。

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