第16話

クラドルとフレアはそれぞれ違う街からナルニカに来た冒険者だった。


二人とも登録はまだしておらず、オルカと同じように登録料を貯めるために依頼を受けている。


元々はもう一人仲間がいて、三人でチームとして活動していたのだが最近になってそのもう一人と仲違いし、その人がチームを抜けてしまったのだ。



「それで、新たにメンバーを探してたら凄い強そうな聖獣つれたオルカがいたんでつい誘っちまったんだよ」



運ばれてきた店の料理を書き込みながらグラドルが話をする。


その馴れ馴れしさには少しなれないオルカだったが、タオとカースを褒められたのは嬉しかった。



「それで、オルカさん。どうですか?オルカさんが前衛の攻撃の手になってくれれば、チームのバランスもいいとおもうのですが」



フレアもオルカを誘うことに異論はないらしい。様子を伺うようにオルカに尋ねてきた。


敵を足止めし、攻撃を防ぐ役目をクラドルが担い。


その敵の目を掻い潜り攻撃するのがオルカ。そして、後方から二人の支援と高い火力でのとどめを指す役がフレアとなる。



フレアの言うように非常にバランスの良いチームである。


オルカはこの街に来たばかりで他に知り合いはいない。


一人では受けられる依頼の数が少なくなってしまうため、チームを組むこと自体に不満はない。


となれば、オルカはこの誘いを受けない選択肢はなかった。


少し不安があるとすれば見るからにチャラそうなクラドルのテンションについていけるかどうかというところである。



「よし、そうと決まったら早速適当な依頼を受けてみようぜ」



考えるよりまず行動というタイプのクラドルは食事を終えるとすぐさま立ち上がった。


お金が欲しいのはオルカも同じなので異論はない。


三人はそのまま向いのギルドに戻る。


そしてクラドルが掲示板から適当な依頼を受けて戻ってきた。



「#傷顔__スカーフェイス__#っていう名付きのクマの討伐だってよ。魔物じゃねぇけど、人を襲ってるみたいでそれなりに報酬が高い。初仕事にしてはちょうどいいとこだろ」



そのままクラドルの案内の元、依頼書に書かれた出没情報のある地域まで三人は向かう。


ナルニカの街を出て少し行った森の中だった。



「タオ、獣の匂いを辿って。人間を襲うようになったってことはだいぶ気性が荒い。特有の匂いがあるはずだ。カースは空からそれらしいクマを探してみて」



森に着くとオルカが二匹に指示を出して捜索を始める。


普段は主人のことを頼りないと思うこともある二匹だが、こういう時はしっかりと指示を聞く。


そういう判断がオルカの得意分野であることを知っていて、信頼しているからだ。



「ほぉ、便利だな聖獣っていうのは」



感心したようにクラドルが言った。

クラドルから見るとオルカはまだ若すぎる。成人こそしているが、冒険者として一流とは思えない年齢だった。


それでもチームに誘ったのは連れている二体の聖獣、つまりタオとカースがとても強そうだったからだ。


ビーストテイマーはあまりよく見る存在ではない。


王都にある名門の話はクラドルも聞いたことがあったが、その数は多くないのだ。


それはビーストテイマーで強くなるのは難しいからだった。


普通の冒険者と違い、聖獣と共に戦うビーストテイマーは強くなるためには強い聖獣が必要になる。


そして、強い聖獣というのは扱いが難しいのだ。


最初はどれだけ愛想が良くて、懐いていても力をつけるたびに傲慢になっていき、自分の力と主人の力が見合っていないと思えば平気で見限ることもある。


それ故に冒険者になる上でビーストテイマーを選ぶ者はほとんどいないのだった。


しかし、オルカは強そうな聖獣を二体も従えている。よく懐いているし、いうこともしっかりと聞く。


クラドルがオルカを誘ったのはその様子にオルカの底知れない力のようなものを感じたからだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る