惑星ドーンの旅人

真名千

惑星ドーンの旅人

 惑星ドーンの低緯度地帯に生まれたら一生を歩き続けなければならない。歩けなくなった時が死ぬ時だ。猛烈な熱で干からびて死ぬか、絶望的な寒さで凍結して死ぬかの違いはあるが。

 惑星ドーンの自転は非常に遅く、太陽に対して回転が止まる寸前だった。非常にゆっくりと太陽光の当たる場所が移動していくため、太陽光の当たり続けている場所は灼熱の地獄になるし、太陽光の当たらない場所は極寒の地獄になる。

 人間が生きていけるのは太陽光がほどほどに当たる朝や夕方の地帯、そして極域だけだった。

 それも朝の地帯に生きるなら太陽から逃げるように歩き続けなければいけないし、夕の地帯に生きるなら太陽を追いかけて歩き続けなければいけない。極域の住民のみが少しの移動で快適な生活を維持することができた。

 それゆえに極域での生活を望んで低緯度地帯から侵入を図る部族が絶えなかった。

 逆に弱い部族は高緯度地帯から追い出されて、より移動が過酷な低緯度地帯に追放される。そうして毎日歩くだけで必死な部族が最南の部族であった。

 最南の部族では足が衰えた者、足に怪我をしてしまった者はその場に置いていかれる。背負ってもらえるのは妊婦や子供だけである。運が良ければ洞窟に避難してとてつもなく長い半日を凌げることもあるが、通常は長生きできない。歩けるように回復しても、朝の部族から夕の部族、夕の部族から朝の部族への移籍は簡単ではなかった。


 そんな中、一度怪我で置いて行かれたにも関わらず元の部族に奇跡的な復活を果たした人物がいた。彼は一人北極地方を経由する旅で元の部族に追いついたのだ。

 そして、自分のような目に遭う人間が部族から今後出てこなくするために、一つの計画を立ち上げた。ありきたりな北の高緯度地帯を奪う戦争ではない。


 赤道を越えた南極への冒険である。途中にどんな障害となる地形があるか分からない。実は先に行っている部族がいて南極が占領されていないとも限らない。

 それでも旅人中の旅人と言われた彼は遥か南への旅を試みた。

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惑星ドーンの旅人 真名千 @sanasen

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