第43話 無理でしょう

旦那と結婚する

から結婚してくれって言われても無理でしょ。子供はどうする、二人もいるんだぞ。

一番の問題はそれだった。なおみのことは嫌いじゃなかったし、結婚してもいいかなと思ったけど…。

俺には自信がなかった。ナオミとの結婚は別にいいかなと思ったけど、いきなり二人の父親になる自信がなかった。確か仕事で子供の相手は沢山してきた、結構子供に人気もあった。だけど仕事上での話で、自分の子供となると話は全く違った。

お金はどうする。俺全くお金ないぞ。だいじょうぶ。私福祉士の資格取ったから。募集がいっぱいあるのよ。

確かに介護福祉の募集はたくさんある。それだけ人員が不足しているんだろう人気のない仕事だということだ。

そんな大変なことをやって生きるつもりなんだろうかなおみは…。

そういえばそんなこと言ってたなぁ。直美はそんな風に言うけど僕は全く自信が持てなかった。今までの一人で気楽な生活を捨てていきなり二人の子供の親になるなんて無理だ絶対に。

去年だったら話は違ったかもしれない、母親がまだ生きていてくれたら…生きていてくれる間に俺は、結婚したいと思っていた。今まで散々お袋に苦労をかけてきた、それがせめてもの償いだと思っていた。

結婚なんて所詮親のためにはできても、彼女のためになんかできやしない。

今でも一番の後悔は親が生きてる間に結婚してあげられなかったことだ。親に孫を見せることできなかったことだ。ひどいやつだと言われるかもしれないが彼女のことなんかどうでもいい。俺はただおふくろに孫を見せてやりたかった、それだけだ。

俺は毎朝お袋の墓の前にいき花の水を替えその時々思っていることを願う。まぁだいたいは体のことと女のことだ。もう少しお金があったらいつも花を買って墓に活けてやりたいんだけど…。今のところ全く花を買う余裕がない。なんとかもう少しお金を稼げるようになりたいなぁ。今のままじゃお墓に活ける花も買えやしない。

考えてみるとお袋のことを知っているのはなおみだけだった。

他には誰もいなかった。俺はもうだれも袋に紹介することはできやしない。

だけど俺は最近結婚したいと思うになってきた。全く自分勝手な話さ。俺はどこまでも自己中な人間なんだなと改めて思った。ひどいもんだお袋が死んでやっと結婚したくなるなんて。お袋何度も結婚しろと、もういい加減結婚してくれと言っていたのに…俺は思い出したおふくろに見合い話を勧められたこともあった。お袋に頼まれたのかおばさんの方から勧められたこともあった。何度もそんな話があったなぁ。結局俺は我を通し全く相手にしなかった。そうこうしているうちにおふくろも親父もいなくなってしまった。俺は一人になった。人の願いを聞いてやらないで、自分の願いだけは聞いてもらおうなんて身勝手なやつだ。そんな勝手な理屈が通るはずがない。普通に考えてそうだ。まったくどうにもならないな俺という人間は。この先どうしたいんだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ナンパ大辞典 瀬戸はや @hase-yasu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る