第42話 亜麻色の髪の乙女


彼女は今までの子とはちょっと違っていた。少し日本人的ではなかった。髪が少し茶色っぽくてウェーブとゆうかカーブがかかっていた。肌の色もやけに白かった。そういえば小学校の頃にもあんな感じの子が一人いたなぁ。その娘も小学校ではちょっと浮いた感じだった。だからなんだろうか中学校でも僕の事を随分気に入ってくれたらしいその娘は、とても熱心だった。廊下ですれ違っても小さなメモ書きを渡したりされた。バレンタインデーとかイベント事があると必ず僕の靴箱の中に手紙とかマフラーとかチョコレートとか何かを入れておいてくれた。人はどんなことにも慣れてしまうものだ。僕は靴箱の中に何かが入っているのはまぁ普通の事だと思うになってしまっていた。友人は随分羨ましがっていたが。友人は彼女のことが好きだった。どうしても僕は彼女の名前が思い出せない。中学2年の頃だったか、彼女の友人と彼女から家へ遊びに来てと誘われた事があった。僕はどうしても恥ずかしくて一人でいけなかったので友人を誘って彼女の友人の家に行った。そして人生で忘れられないとっても気詰まりな時間を、中学生にして初めて知った。本当につらかった。彼女の友人も彼女の友人の家のお母さんも、みんないい人だと思うんだけれど、どうにもならない。ただ僕は二度とこんな経験はしたくないと思った。今思い出しても本当に嫌だ。もう二度とあんな思いはしたくない。彼女も彼女の友人も誰も悪くないのに何でこんなことが起こるんだろう、未だに謎だ。僕はもっと誰かに相談すればよかったのかなぁ。あの時はただ彼女と彼女の友人に家に来るように言われてそうするしかなかった。そう思い込んでいた。僕には全く選択の余地がなかった。なんとか自分の友人を連れて行くのがせいぜいだった。友人にも気詰まりな思いをさせて申し訳なかったが、あの時は君だけが頼りだった。君がいなかったら僕は絶対に行けなかった。

彼女と彼女の友人もあの日のことについては何も語らなかった。何も言わないのが暗黙のルールのようなことになっていた。僕はもうこの件については思い出したくない。これが人生初の黒歴史なんだろうと思う。

終わってしまったことを振り返ってもろくなことはない。これからのことを考えよう、どうせなら。

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