第31話 片岡義男の小説の話

片岡義男の小説に誰もが今寂しいというやつがあった。確か映画化もされたはずだが、僕は一時期片岡義男ばかり読んでいた時期があった。だけどあれは小説っていうよりも映画を観ているみたいな感じで。文学っていう堅苦しいものではなかった。ほとんど雰囲気みたいなもので、そんな気分になりたい時はこれをっていう感じだった。だけどタイトルは良かった。誰もが今寂しい確かにそうだと思う、みんな誰かを、人を求めている。 そうでなきゃ夜の街をぶらついたりしないだろう。酒場には人が溢れていないだろう。夜仕事をして疲れているのに 家に帰らずに友達なんかとあるいは一人で酒場に行く。そして酒を飲んで何を期待してるかって言ったら男も女も同じだ。誰かに出会って、そして抱き合えることを望んでいるだけだ。

誰も、今寂しいからみんな抱き合いたいのさ。僕もなおちゃんと抱き合った時は、なおちゃんがやっと抱き合えるって言ったのをよく覚えてる。こんなに若くて可愛い19歳のなおちゃんも同じだったんだ、寂しかったんだ、とあの時思った。 おっさんになっても10代でも寂しさは変わらないんだな。そうだ、あんなに可愛い若い子が寂しいんだからおっさんが寂しいのは当たり前か。

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