第32話 藤が丘のバーで知り合った女

その女はかなり酔っていた。へべれけという感じだが、若いからか意識ははっきりしていた。少々ろれつは怪しいところがあったけれども、ちゃんとしていた。初めから喧嘩腰な感じで話しかけてきた。女ヤクザかチンピラのような感じだった。それ系なのかなーと思ったが、顔立ちは綺麗ですこぶるいい女であった。なので少し話を聞いて相手をしていた。「何であんたはバーに来て、そんなもん飲んでるんだよと」僕が飲んでいるものにケチをつけてきた。僕は前の店でかなり飲んできた後だったので、(その店で3軒目だった)だから酔い覚ましにジンジャーエールを注文した。それがどうも気に障ったらしかった。というか、 難癖をつける相手を探していたみたいだったから、 喜んで僕のことをあれこれと何度も嗜めた。

「あんた何しに来てんの。バーで健康になりにでも来てるのかよ。」「そんなもんを飲む人初めて見たわ。」 よほどジンジャエールが気に入ったらしい。彼女はそのことを何度も何度も繰り返していた。 私は男と二人で来ていた。私の連れはかなりこういう場面に慣れた男なので、面白がっていた。 その女も、つれの女を連れていて二人でかなり早い時間からこの店に居座っていた感じだった。もう一人の女というのはあまり覚えていないし印象がほとんどないが、まあ大人しい女だった。この女のように人を激しく罵ったりするようなキャラではなかった。 まあまともな友達という感じだった。

要するにその酔った女が言っていることをかいつまんで言うと、ジンジャエール何か飲んでないで、こっちへ来て私らと一緒に酒を飲め、私らと付き合えよと。そんなことだった。

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