第14話 夢子さんとの再会


ハローワークで紹介してもらったリフォームの会社で夢子さんに再会した。もしかしたらそんなことがあるかなとは思っていたが本当に再会できるとは思っていなかった。僕が夢子さんと再会したその会社は、実は会社は夢子さんが立ち上げた会社だった。給湯器の販売とメンテナンスを主な業務とした前の会社で夢子さんは頼まれた時にリフォームのほうも引き受けていた。給湯器を設置する時に家のリフォームやメンテナンスなどをいろいろ頼まれる事はよくあることだった。

お風呂の洗い場の右側にだけ水が残ってしまって、どうしてもお風呂場がいつも湿った感じになってしまうとか湿っていてはカビが生えてしまって大変だなど家によっていろいろな悩みがある。家に関係のある仕事はいろいろあった。夢子さんも色々な仕事をしている間にどんどん自分でリフォームが出来るようになっていった。給湯器というのはその家の水回りや電気周りと関わりが出てくるのでそうしたことと関係のあるリフォームを頼まれることはごくごく普通のことだった。はっきり言ってこちら側からお願いしなくてもお客さんの方からついでにこういう修理もしてもらえませんかと頼まれる事の方が多いぐらいだった。家の修理というのは人に頼むといろいろとお金がかかるものだった。最近は DIY で自分で修理する人も増えてきたが、水回りの修理ともなるとなかなかが素人の手には負えないことが多かった。なので給湯器の販売には水回りのリフォームやメンテナンスの話がどうしても出てくる、夢子さんはそうした話に対応できるように色々勉強したらしい。リフォームというのは一つの家で頼まれると隣近所の家からもリフォームの依頼をされることが多かった。だからリフォームを引き受けると会社にしてもできそうだなという気になってくる。とはいえ気になるのと現実に会社を作ってうまくいくこととは全く次元が違う。夢子さんはその次元が違うところを超えて成功したわけだ。

「ここ夢子さんの会社だったんですか。すごいですね夢子さん社長ですか。」

夢子さんはただ美しいだけでなくて可愛らしかった。一言で言うなら美しさと可愛らしさが丁度良いバランスで保たれていた。とくにその笑顔にはとても魅力があった。初めて会った時から半年たって夢子さんはより知的に凛々しくなっていた。スポーティな様子は相変わらずだった。夢子さんは初めて家に来た時にも玄関の脇に置いてあった自転車を熱心に見ていた。大学時代はサイクリング同好会に入っていたそうだ。


「あの頃はまだ寒すぎたけどこれからの季節ならサイクリングには持ってこいですよ。」

夢子さんは曖昧に笑っていた。

「僕もよく家の周りをサイクリングするんですけど時間のある時は少し足を伸ばして犬山ぐらいまで走るんです。犬山だったら1時間ぐらいで行けますよちょっと頑張れば。」

「私もよく行きました。でも1時間っていうのはかなり早いですよね。もう少しかかりませんか」

「かなり頑張ると1時間です。」

「ですよね。」

「景色を楽しみながらゆっくり行くと2時間かな。」

「それぐらいですね。」

「じゃ今度は2時間コースでのんびり行きませんか?

何曜日がいいですか?」

「じゃあ来週の土曜日なんかどうですか?」

「わかりました。」

僕たちはお弁当を持って犬山までサイクリングに行くことに決めた。

夢子さんのペースは結構早かった。会社も立ち上げて忙しいはずなのに結構運動もしていたみたいだ。

「夢子さんお城の前の商店街にあるジェラート屋っていたことありますか?」

「ありませんけど。そんな店ありましたか?」

「こないだ行った時そこで食べました。美味しかったですよ。」

「じゃあ行きましょう。」

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