第7話 人気者だった

おふくろはどこ行っても人気者だった。デイサービスに行っても歯医者に行ってもクリニックに行っても、なぜかすぐに看護師さんやスタッフの人と仲良くなってしまう。いつも向こうがお袋の来るのを楽しみに待つような感じになってしまう。どういうわけだかそうなってしまう。いつも俺は不思議だった。おふくろはどうしてこんなに人に好かれるんだろう。甥や姪、親戚のおばさんやおじさん達からもみんなに好かれていた。一体何がそうさせるのか以前は何とも思わなかったが、最近になってお袋がどうしてそんなに人に好かれるのか不思議に思うようになってきた。お袋は大阪のおばちゃんみたいに誰彼構わずあめちゃんや何かを上げるわけではなし特に何かを持って行くわけじゃない。何も持っては行かない。大体お袋はそんなにお金を持ってはいない。だからといってケチというわけではない。姪や甥小さな子が来れば喜んで何でもあげた。お菓子やお金のある時はお小遣いだって渡した。でもそれは小さな子供に対してだ。大人に対しては雨なんかあげたりしたら逆に失礼になってしまう。色々考えるとますますわからなくなる。なんだってお袋はあんなに人気者になったんだろう。

色々聞いてみるとどうやら女学校の頃から人気があったらしい。親戚のおばちゃんの中で俺が一番敬愛しているひろこさんも、お袋のことを尊敬していたと話してらっしゃった。あんな風になりたかったと言ってらっしゃった。おふくろの一体どこにそこまでの魅力があるのか、俺には分からなかった。

女学校時代のお袋のことなんて全く知らなかった。ひろこおばさんはお母さんってとても人気があったんのよと言ってらっしゃった。お袋は息子である俺の目から見てそれほど美人というわけではない、ブスでもないけど容姿的には普通と言っていいだろう。じゃあ一体なぜそんなに人気があったのかそこまで行くと今と同じことになってしまう、お袋がどうしてそんなに人気があったのかよくは分からない。まあ結局お袋はいつも明るくて楽しい人だったということなんだろうなと思った。

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