第6話 結婚

ぶり大根もなんとか作れたしあとは中華料理か、野菜をたくさん摂るなら中華料理が一番だな。僕は中華料理が好きだった。ただ食べるのは好きだったが、作る方はさほど得意ではなかった。

イオンでいろいろ見てみるか、イオンの食品棚を見ているうちにシチューもういいなと思った。野菜をたくさん取れるし。簡単にできる。

とりあえずこれぐらいでいいかなと俺は思った。時間のかからず手間もかからないものが結構作れるようになっていた。食事の方はまあまあそんなもんだろう。あとは認知症というやつがどうやったら良くなっていくのかそこがよくわからない。現段階では認知症が良くなるという薬はない。数年のうちに出てくる可能性はあるみたいだがそれをあてにしていいものかどうかわからない。ただこれだけ多くの人が認知症になりつつあるのだから今後それを解決していくような薬がたくさん出てくる可能性は十分にある。現時点では画期的な薬のようなものはないというのが本当のところだ。ただそうした種類の薬も数年のうちに出てくる可能性は十分にある。私的な意見として言わせてもらえれば、おそらく精神的なものが相当大きなウェイトを占めているんじゃないかどう思う。例えば孫が生まれたとする、そうすると認知症は一気に良くなってしまう可能性は十分にあるんじゃないだろうか。毎日が楽しくてしょうがなければおそらく大部分の認知症は改善する。おふくろにも何度かそろそろ結婚する気はないのかと聞かれたことがあった。僕はたいていはうやむやにしていた。はっきりこれという相手がいないというわけではなかったが、すぐに結婚というのは無理だった。おふくろは付き合ってる相手がどんな子かは一度うちに連れてきたので知ってはいた。可愛い子だねとは言ってくれていた。ただ若すぎるだろうとは思っていたみたいだ。あの子と結婚するだろうという風には考えていなかったみたいだ。それは僕自身もそうだった。なおみと結婚ということが現実には結びつかなかった。結婚といってもまだ冗談みたいなものだった。

お袋は以前に比べてあまりうるさく結婚と言わなくなった。もう半分無理だろうなという気持ちになってしまったのかもしれない。もしかしたらお袋は俺の結婚を諦めてから、認知症が進んでしまったのかもしれない。妹のこともあったし、あまりしつこく迫ると俺が無理なことでもすると思ったのかもしれない。

結婚の二文字は宙に浮いたまま現実感と言うところには降りてこなかった。

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