第5話 認知症2
おふくろの認知症はまだ軽度だったので大抵のことはできた。ただ料理だけがなぜか全然できなくなっていた。
食事をしないわけにはいかないので、仕方なく俺が作るしかなかった。
とにかくスーパーでいろいろ何がどこにあるか知ることだ。
僕は夕食の材料を買いがてらスーパーのどこにどんな食材があるのか色々みることにした。
何が安くて何が得くなのか、何が得意のスーパーなのか店によって色々だった。けっきょく時間的なことを考えると、一番近いスーパーが一番便利だったがそんなにあれこれ迷ってもしょうがないと思って基本的な材料はイオンで買うことに決めた。
お袋はとにかく面白かった。とくに表情が豊かだったし、いろいろ人を楽しませるコツのようなものを心得ていた。おかしな面白いことも言う。こんな人間だからおふくろはどこ行っても人気者だった。昔からこんなだったかなぁ?お袋が楽しい人だったことは間違いないそれは俺もよく知っていた。ただこんなふうに毎日お袋といる時間が長くなるといろいろ知らなかったことが見えてくる。おふくろは食べることが好きだったのは知っていたが、これほどまでに食欲が旺盛で食べることが好きだとは知らなかった。ちょっとうまいもの作ると袋はすごく喜んでくれた。茄子をフライパンで炒めて醤油と砂糖で甘辛く煮込むとお袋はそれがすごく気に入ったらしく、毎日作ってくれとせがんだ。茄子はそんなには高くなかったし作るのも簡単だったのでナスの甘辛煮がどうしても多くなった。たまにはたんぱく質も摂らなきゃなと考えてお袋が好きな魚を使ったものがいいだろうと思ってイオンで安い魚を探した。
ワラサという魚が安かった。ぱっと見た目はブリかカツオの小さい魚のようだった。白身でブリぽかった。ブリだとするとちょっと脂っこいのかなと思ってみそとかネギとかあとたたきで混ぜるような魚の臭みを消すのに役立ちそうな野菜をいろいろ混ぜた。色々試してやって行くうちに味噌だけではなく少し甘みを出すために砂糖とか醤油や、わさびなんかも混ぜるといいなということが少しずつ分かってきた。味噌をベースにしたその味をお袋は気に入ってくれたみたいだ。いつもそれを作るとお袋は喜んで食べてくれた。
酒のあてみたいなワラサのなめろうをおふくろは喜んでくれた。
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