第11話 知人へのインタビュー2

「ええ……そうですね。二十年以上も前ですけど未だに忘れられませんよ。あれが私の初恋だったんですから」

 県庁職員のその女性は非常に綺麗な女性だった。

 美人すぎる県庁職員としてニュースに取り上げられたことのあるその金髪碧眼の美貌は、仕事柄もあり特別着飾っているわけではないが、年を重ねた現在も非常に魅力的だと誰もが思うだろう。

「当時はあの後、しばらく食事が喉を通らなくて一ヶ月で10kg痩せちゃったりとかしたんですよ。乙女でしょう? でも今となっては……どれもいい思い出です」

 そう言って笑う。その表情は、高校時代はクール系と言われていた頃よりも朗らかで親しみやすいものになっていた。

「何より、あの人は最後まで誠実でしたから。私に対しても自分の夢に対しても、誠実すぎるくらいに誠実でした。実は私この年まで悪い男に引っかかったことないんですけど、あの人の誠実さがいつも心に残ってたからなんでしょうね。ありがたいことに男性に声をかけてもらうことは多かったですが、あの人のような誠実さを感じられる人の誘いだけ受けるようにしてきましたから……本当に、いい人でしたよあの人は……」

 あ、でも。

 と何かを思い出したかのように手をうって言う。

「正直すぎるのはちょっとどうかと思うんですよね。あの人、社会人になってから再開した時に『森さんとあのことがあってから、サブヒロインを書くコツを掴んだんだありがとう!!』って言ってきたんですよ? サブヒロインってだいたいが負けヒロインじゃないですか、主人公に好意持ってるけど結ばれない役回りですよ? まったく、酷い男だと思いませんか? 全然悪気がなさそうで本気で感謝してるのが、本当にタチが悪いですよ」

 それからも楽しそうに、その女性は彼のことを語ったのだった。

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