箱庭の終末

@hitofumi

おわり

 「最近、死にすぎだよな」

 「確かに。ちょっと怖いかも」

 低俗な落書きにあふれた掃き溜めのような町のモノレールでの会話だ。随分と派手な格好の若い男二人が互いに顔も合わせずに話している。

 人類は衰退した。僕が生まれるよりももっと前。学校では百年前だと教わった。スピリチュアルに中てられたかわいそうな人達なんかは、千年前なんて言ってたりもする。とにかく、そのくらい前に恐ろしい病気が流行ったらしい。そのせいで人類の重要な部分を担ってた人とかがみんな死んでしまったそうだ。嘘かほんとかは知らない。ただそう教わった。

 ガコン

大きな揺れと振動に体が崩れそうになる。さっきの派手な男たちも地震かとか言いながら周りを見渡してる。ほかの乗客も似たように困惑している。かくいう僕も何が起きたか一瞬わからなくなって困惑する。

~♪

車内放送の曲が流れた。乗客すべての意識が車両スピーカーに集まる。

「モニターにご注目ください」おそらく運転手だろうか男の声がきこえた。普段聞くものとそう変わらない。少し鼻にかかったような声だった。唯一違うところはひどく震えていたことだった。

 横のモニターの映像が、運転中に流れていた広告から切り替わる。瞬間後ろに立っていた派手な男の一人が急に倒れた。もう一人のほうは、倒れたやつの肩を揺らしながら声をかけている。まったく返事のないそれは、首の座っていない赤子のようにガクン、ガクンと首を揺らすだけだった。そのあとも必死に声をかけていたが、スピーカーからの音声が流れ再び注意がモニターのほうへ戻される。黒い服を着た生き物が写っていた。見たこともない形をしている。おそらくは口だと思われる部位をパクパクと動かしながら何か話している。低い声であることから察するにおそらくは男性なのだろう。頭部と思われる部位には、中心から対照的に穴が四つ開いている。上部の二つには球体のようなものが入っており、その部分だけがせわしなくぎょろぎょろと動いていた。周りの乗客は、年寄りは気を失い、若い女は吐き出しそうになるのをこらえるように、涙を流しながら口元を抑えていた。

「全異形の皆さん、こんにちは。私は人類の代表を務めている者です」男は語る。

異形?人類の代表?そんなことはあり得ない。僕の知る限り、というかどれだけ幼くたって人類の代表があんな姿じゃないことくらい知ってる。僕の思考なんて無視して男は続ける。

「今人類の間では非常に致死率の高い病が流行しています」

病?

「我々はこの病を異形による人類への宣戦布告とみなします。よって」

男は大きく息を吸った。

「これより、人類による異形への報復を開始します」

おそらく理解できた人は誰もいなかったのではないだろうか。映像を見ている全員が口を開けたまま呆然としていた。瞬間、爆発が起こる。外を見ると議事堂が燃えている。どういうことだ?何が起きているのか理解ができない。

 スピーカーから声が聞こえた。モニターを見ると男が死んでいた。

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