幕間3


やぁ!初めましてかな?ユスティーニ。

 あぁ、敬語は要らないよ。見下ろす身長差だけど、私の方が一回りは年下だからね。

 配属先には、年齢とのギャップを何て説明するんだい?

 うん?……ふふっ。自分に魔法をかけ続けて成長が阻害された、か。

 そういう実験は確か……うん、されていた記録があった筈だし、良いんじゃないかな。

 さて、これから君は私が設計した箒星グラビティアの試運転をする訳だが、その前に質問がある。

 どうして、その強力な魔法を、まだ人助けに使っているんだい?

 面接はもう終わっているのだから、そんな質問の意味が分かりませんーなんて顔しないで、本音の部分を聞かせて欲しいな。

 人間が君にした行為は到底許されるものではない。

 君がかつて乗っていた機体の、最後の作戦を知っている。

 勿論、当時の私は赤ん坊だったから、人伝の話だが。

 第四次世界大戦終結の為、当時最前線であった極東に、箒星グラビティアの一撃が落とされた。

 結果、着弾点にあった生体化学兵器が漏洩し、軍民問わず全勢力に最悪の被害を出した。

 お上は命令しておいて、極東汚染による全ての責任を実行者である君に被せた。

 罰として、度重なる実験に身を裂かれて、君は成長出来ない身体にされた。

 君には奴らに復讐する理由がある。世界に牙を剥く動機がある。人間側に着く必要は無い。

 ————。——……そうか。それは悪かった。

 君にとってこの質問は、何で呼吸をしてるの?くらいに不躾なものだったね。

 贖罪、か。それは自分が生きていて良いのだと、他ならぬ自分自身が許すための行動だ。

 第三者が茶々を入れる話じゃあない。とはいえ、律儀というか、難儀というか……。

 うん?罪悪感だけ持っていても駄目だって?なんだ、そう言ってくれる奴がいたんだ。

 生きる理由なんて無くても良いけど、沢山あった方が楽しい。そう、楽しんだ者勝ちだよ。

 それがあれば、君が見ている灰色の世界が、少しは鮮やかになるだろうからね。

 この箒星グラビティアは、それが見つかるまでの隠れ蓑だ。君たち最終神秘を、科学技術で加工コーティングする檻。

 法律条約の枷を嵌め、魔女を人間社会に……この星に縫い留める為の飛翔上限ほうき

 戦いの中でしか生きられない君を守る鎧だ。

 体成長しないけど、いつか情緒が成長して、自身の心が決めた理由を持てる日が来ると、願っているよ。

 さぁ、それではお披露目だ。これが君の後継機。以前搭乗していた箒星グラビティアムーンラビットと、君の要望であるスノーホワイトをベースにしている。

 我がラグランジアの技術の粋を結集させた最高傑作。この子の名前は————。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る