第6話
私には、整形メイクの得意な叔母がいる。
メイクの技法で美容整形でもしたか、別人のようにまでも見せてしまう。
一連の騒動で、私が一番ありがたく感じている存在だ。
月光数値化システムが導入される前から私は髪形を変え、整形メイクを会得した。
世界に注目される論文発表の時すでに、私は周囲の目を煩わしく感じていたのだ。
目立つのは御免だ。
子どもの頃から、人目が自分に向く事が極端に嫌だった。
例えば結婚式など、大金を払って見世物になっているとしか思えない。
元々私は、そういう性格だ。
もちろん、アイメイクばっちりの厚化粧をしている訳ではない。
つけまつげでもすれば別人になれるかと思っていたが、それは悪目立ちするだけだと叔母に言われた。
早い話が、元々の不細工を別の方向性の不細工にイメチェンしたのだ。
どんなアイテムで何をどうしているのか、私は理解できていない。
だから上手く説明できない。
ただ、どんな分野にも専門家・プロが存在すると実感している。
美しさを作るだけではないメイクの技術は偉大だ。
システム開発のために、多分野の研究者が関わる事になった。
私もその中のひとりに見えたかも知れない。
フォロアー数などを増やすために現在の私を盗撮して、ネットに曝すような者も研究所内には居ない。
それは元々の目立たない容姿と性格、そして日頃の行いの賜物と自負している。
嫌われるような言動があればそれは記憶に残り、相手のネガティブな言動にも繋がってしまうものだろう。
『研究所に名誉を奪われた本当の開発者』などと世間の目を引けそうな見出しで、私の写真を曝す者も出て来そうなものだが。
今のところは、その様子もない。
もちろん、研究所内でも研究内容は研究室ごとに極秘であり、一般研究員がどんな役割を果たしていたかは知られていないはずだ。
おかげで、私は主要研究員でありながら研究所のために雑誌を買いに行くというお使いも、パパラッチに追われずにこなす事ができるのだ。
現在、何故か悪者として祭り上げられている開発者の中に、私は名前を連ねていない。
結局、現実などそういうものなのかも知れない。
与えられる情報を鵜呑みにするのは、誰かに踊らされている事に他ならないのだろう。
――とはいえ、責任を感じていない訳ではない。
利益を得たのが研究所やその幹部連中だけだったとしても、その元となる月光数値化を実現したのは私自身なのだ。
研究中に書類整理やグラフ作成を頼んでいた助手の北本君と、成果ボーナスが同額だったと言ってもだ。
追うべき責任が同等ではない。
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