第5話
そして刑法は改定された。
もちろん世界が先だ。
日本も右に
一般に『犯罪時間』と呼ばれる、月の見える夜に適用される。
月光数値が跳ね上がる満月の夜など、例え殺人を犯したとしても不注意による事故と同じような扱いになってしまった。
もちろん減刑は殺人だけでなく、全ての違法行為に適用された。
当然、犯罪時間ならば罪にならないという極論になるだろう。
月光数値が犯罪件数と結び付いたからと言って、罪を犯しても仕方ないという理屈は無理がある。
私は法に影響などしないものと思っていたが、どこかからの圧力という謎の力が背中を押したらしい。
犯罪時間の有効活用を目的とした圧力。
私に理解できる話ではない。
刑法改定後、犯罪時間の犯罪はすぐに膨れ上がった。
当然の結果だろう。
犯罪時間の犯罪に関わる裁判も次々に報道された。
加害者側には、罪を犯したのは月のせいだという配慮。
被害者側には、犯罪発生の可能性が高い時間帯に行動した不注意。
被害者も悪いという押し付けの含まれる判決に、被害者たちが納得するはずはない。海外では暴動も起きていた。
法改定は失敗だった。
すぐに犯罪時間の減刑を終了させた国々はまともだ。
開始は世界に倣えでも、終了が倣えないのはなぜなのか。
有効活用をする者たちからの圧力なのか、開始した事への責任追及から逃げ続けるという無駄な時間が流れたのか……。
日本は後手に回る対策で、犯罪時間の減刑を狙った犯行を防ぐための新条例などと政府が議論し続ける間にも、犯罪時間の被害者が激増していった。
始まるのは世界に倣えでも、改定されたばかりの刑法を元に戻すのは各国バラバラだった。
日本は早々に犯罪時間終了とした国に倣うという判断はしなかった。
これまでの流れが嘘のように滞り、私の認識通りに国会では、
「~ではないのではないのでしょうか!」
と、声高らかに言った後の野次で何を聞かされているのかわからない状況、という中継が毎日のように流されるようになった。
現在は『犯罪時間騒動』と名付けられて大騒ぎしている。
法改正への批判は、もっともだ。
しかし犯罪時間騒動の犯人探しが、月光数値化システムを開発した研究所に及ぶのはおかしな話だろうに。
実際に月光数値と犯罪を結び付けた海外の犯罪心理研究者や政治家たちが、発案元を日本に押し付けたらしい。
それを正論で突っぱねる場面はどこかにあったのか。
実際に月光数値化を実現した私自身が
とはいえ、そういう訳だ。
当研究所は現在、犯罪被害者を激増させた悪者という疑いを掛けられている。
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