6:55
6:55
目が覚める
いつも通り夜更かししたせいで身体が重く頭も冴えないのに、すぐに二度寝してしまいそうな程の強烈な眠気は襲ってこない。
ここ数日、こんな状態が続いている。
身体や心の不調というわけでもなく原因不明でもない。
明確な理由があった。
「行きたくない、、、」
今日は〖scrap rat〗のテストプレイ前最後の確認日。
一度最初から最後までプログラムのエラーを洗い出し、問題が無ければ明日からテストプレイの段階に入れる。
昨日一昨日と空いた時間で不安な箇所をチェックした分には問題が無かった。
ただ、短い時間でチェックする事が出来たのはごく僅かな範囲のみ。
全体を通すと何が出てくるか、、、、。
今から不安で仕方が無い。
二週間程度ではあるけど余裕をもってスケジュールを進められてるし今日問題が見つかったところで何とかなるけど、それでも制作の中軸であり原作者である自分にとっては胃を締め付けるには十分過ぎるイベントだった。
それに加えて、詳細な発売日の決定と発表や、〖scrap rat〗に掛けられた宣伝費。
やっとの思いでベッドから降ろした足に見えない重りが纏わりついてくる。
元々原作ファンが居てくれた〖scrap rat〗は制作側だけでなく広報の熱量も凄く、情報解禁になってからの宣伝の熱量はそれはもう凄かった。
原作者である自分が一番冷めてるんじゃないかと思うくらい、何がそこまで突き動かすんだと考えさせられる熱量を持っていた。
高過ぎる熱意が伝わったのか相手方にファンがいたのか。
もしくはディザームービーで惹きつけられたのか。
どれが影響を及ぼしたのかは分からないけど、スポンサーも乗り気で、実質的な自社負担はほとんど無いまま広告を打ち出す事が出来たらしい。
会社の期待、スポンサーの期待、広告による顧客の期待。
その全てが乗っているような気がして、身体は鉛のように重く感じる。
何度も意見の交換をしたし制作に自分が携わった部分なんて微々たるものだし、そもそも立案者は自分では無い。
そんな慰めは沈痛な面持ちをしている時に周りから何度も掛けられた。
「絶対上手くいく!」
「万が一上手くいかなくても世那君の責任じゃないですよ」
励ましの言葉も何度も掛けられた。
でもその度に、応援してくれる人の多さと熱量にプレッシャーは重く圧し掛かった。
今日が無事に終わってほしいという気持ちと、無事に終わればまた完成に一歩近づいてしまうという不安が同居してる。
早く完成して解放されたいのに、完成した後の事を思って未完を願ってる。
だらだらと。
思考はあっちに行ったりこっちに来たり。
悩んでも仕方ない問題で堂々巡りになる。
今日を終えればまた何か変わるんだろうか。
発売に向けて前向きになれるんだろうか。
歯磨きを終えて、半袖シャツに袖を通して、玄関で靴を履いて。
その度に溜息を吐く。
まるで向かい風を浴びるように身体の重心を後ろにしたまま、会社へと牛歩で進んでいく。
出社したら全部夢だった事を願って。
《間もなく電車が参ります。黄色い線の内側でお待ちください》
茹だるような暑さのホームで電車を待つ。
9月も中旬だというのに暑さは増していくばかりで、ベルトの下のシャツの部分にかぶれそうなくらいの汗を掻く。
今まで何度も夏の暑い時期に会社までシャツを出して行こうと考えたけど、その度にだらりとシャツを出して足を崩して立つ先輩サラリーマン達が目について実行には至れなかった。
きっと誰も見てないんだろうけど、それでも誰に向けたのか分からない格好つけをしてしまう。
格好つけたところで暑さが変わるわけではないのに。
見た目への対策、暑さへの対策。
その折衷案としてインナーだけベルトの内側から引っ張り上げるという方法に辿り着いたのは、スーツを着る事に対する緊張感なんて微塵も無くなってしまった入社二年目の頃だった。
ボタンとボタンの間から手を入れてインナーだけ解放すると、微弱ではあるけど涼しさを手に入れる事が出来る。
決して家からインナーを解放する事は無い。
そんな事をしてしまったら、これ以上涼しくなる事が出来ないという絶望感に苛まれる事になるから。
シャツを出さないというのも、これ以上涼しくなれる可能性を残しておきたいという潜在意識がどこかに存在するからかもしれない。
まだ当分は、そんな潜在意識をはっきりと捉える前に見栄えを気にする余裕がありそうだけど。
《お降りのお客様を先にお通しください》
アナウンスを全く聞いていなさそうな様子で、先頭集団が扉の前に陣取って我先にと電車に乗り込もうとする。
扉付近は出ようとする人と入ろうとする人で密度がとんでもない事になってる。
扉によっては行儀よく待ってるところもあるのに、今日の列の先頭はよっぽど何か嫌な事があったのかもしれない。
FXでお金を全部溶かしたとか、娘が口を聞いてくれないとか。
そんなマナーのなってない人に限ってシャツを全部出していて、インナーを出すに留めたさっきまでの自分を心の中で褒め讃えた。
シャツを出したとしても我先にと順番も守らず乗り込んでいくような事は無いけど、それでもその二つが頭の中で紐づけられてしまって、イコールで繋がっているような気がしてならない。
見られ方を気にしなくなったらきっと自分の事しか考えなくなる。
だから、ああやってぐいぐいと身体を押し込んで先に乗ってしまう。
きっとあの人達もシャツを出すまではきちんと順番を守っていたんだろうなと勝手に解釈をした。
「客観視より主観視のほうが随分と楽なんだよ。何せ、見えた物、聞こえた物をそのまま鵜呑みにするだけで済むからね。客観視は想像力と経験測も持ち合わせてないと出来ない、ある意味で人間離れした技だね」
傍若無人の権化のような安穏先輩が、何度目かの訪問の時にそんな事を言っていた。
確か、ゲームの休憩でニュースを見ていた時に聞いたんだったと思う。
あれは確か、モラハラのニュースだったかな。
自分がこれを言いたいあれを伝えたいという思いがあって発信したものがあって、それが過去の自分にとって有意義になったのだとしても、言った相手がどう解釈するのか予測出来る未来予知のような能力が無ければどんな気遣いの達人でもモラハラを避ける事は出来ない。
言われた事にだけはいかいいえで答えるAIのような存在になっても、高圧的だと捉えたられたり空気がピリついてると捉えられる事もある。
だからといって遠慮せずに自分のやりたい事をやりたいだけやれば、きっとさっきの無理矢理乗車していた先輩サラリーマン達のように冷ややかな目で周りから見られてしまうんだろうなと思う。
色んな部署を行き来して色んな人と関わるようになって、新入社員の頃はほぼパソコンと向き合うだけで終わっていた一日に大きな変化が出た。
それからだと思う。
こうして周りからの見られ方を気にするようになったのは。
前までもモテたいとかあの女の人今こっち見てたかもとか、そんな自分勝手なものばかりの客観視はあったけど。
(暑い、、臭い、、、)
電車内も、自分の匂いを理解していない人や満員なのにも関わらず化粧やゲームをする人で溢れてる。
朝の満員電車。
この中には、こうはなりたくないなが山ほど溢れ返っていた。
「では、四班はA~L。三班はM~Zまでのチェックを昼までにお願いします。その後、午後にテストプレイ前の動作確認を行います」
〖生存戦争〗こと〖scrap rat〗は、当初あった2Dグラフィック案から大幅に軌道を修正して、3Dグラフィックを採用したゲームとして発売する事になった。
開発途中からそうなったわけではなく企画会議の時点での決定事項だったが、最初にその案を聞いた時に耳を疑った。
グラフィックやモデリングにプログラム。
やらないといけない事が圧倒的に増える。
2DのRPGで選択肢や隠しギミックなんかを追加するだけで製品化すると思っていたのに、開発担当者達は原作者の想像を遥かに超える熱量を企画時点で持ち合わせていた。
工数が増え、費用が増え、携わる人間が増え。
色んな要素が増えれば増える程プレッシャーは増す。
自分の疲労なんて二の次でとにかく良い物を作らないとという思いで仕事終わりでも家でゲームの詳細を煮詰めた。
毎週日曜日に先輩の家でするゲームからも刺激を受けて、完成に近付いてる段階にも関わらず新たに要素を足したりした。
もう後には引けない。
ここから逃げられる道は無い。
完璧にも見えるプログラムを自動と手動どちらでもチェックしつつ、現実逃避する心を真綿のような覚悟でじわじわと締め付けた。
(休憩終わったら念の為もう一回チェックして、、)
「先輩」
(その後会議室準備して)
「先輩?」
(それから、、、)
「先輩!」
身体がビクリと瞬間的に動き、思考が僅かの間停止する。
テーブルを挟んで向かい側の空白だった席には、今や四班の圧倒的なエースである細木が座っていた。
「蕎麦、冷めるっすよ?」
言われて気付く。
冷房が効き過ぎて冷え切った身体とガチガチな心を少しでもほぐそうと珍しく頼んだかき揚げ蕎麦がほとんど手付かずになってしまってる事を。
「猫舌なんだよ」
あながち間違いでもないけど正解でもない。
少なくとも、かき揚げは揚げたてのサクサクあつあつが好きだ。
半分出汁に溶けてしまってるんじゃないかと思うくらいのこんな離乳食のようなものは好んで食べない。
「いっつもざるそばっすもんね」
「お前もな」
「先輩の影響っす」
細木とは業務上でも仕事終わりの食事でもよく関わるようになって、今や同期や先輩も含めて一番仲が良いかもしれない。
休日に会った事は一度も無いけど、誘われたら断る事は無いだろうなというくらいには心を許してる。
人によっては舐めてると言われても仕方のないような細木の敬語もどきも、変に壁を作られてるような感じがしなくて楽だ。
「なんか悩んでるんすか?」
「テストプレイ大丈夫かなって不安で」
「なんのエラーもなくこんなに早く休憩来れてるのに」
時刻は11:45。
三班も含めて早めにエラーチェックを終え、休憩を繰り上げで取る事になった。
細木の言う通り、順調に進んでいる。
順調過ぎると言い換えてもいいくらいだ。
それでも不安は消えない。
あと何回チェックすれば。
あと何回肯定されれば。
永久機関のように湧き続ける不安を解消してくれるのか分からない。
時間も人も、もう待ってくれる段階は終わった。
何よりも自分の不安の解消を優先させてくれる程、社会というのは甘くない。
「休憩早めに切り上げて戻るなら付き合うっすよ。全然体力余ってるんで」
「いや、大丈夫。モニターとか配線の準備だけだし」
そう。
言葉にしてみればそれだけだった。
それだけなのに、まだまだいくつも準備しなければいけないという気分がしてくる。
「そんな事言っときながらどうせエラーチェックまたやるんすよね。先輩チキンっすもん」
「もしかして馬鹿にしてる、、?」
「もしかしないっす」
「午後の仕事量増やすからな」
「酷いっす!!!!」
四班の仕事の振り分けを一手に担っている俺に歯向かうなんて、細木も中々の馬鹿だと思う。
けどまあ、そんな細木の馬鹿のおかげで、さっきまで不快感しかなかった柔らかすぎるかき揚げも、今は少し美味しく感じる事が出来ている。
増やす仕事の量は、少しだけにしておこう。
「では、テストプレイ前の最終動作チェックを始めていきます。まずは四班がキャラクリエイトに於ける操作性のスムーズさと音声のチェック。その後にA~C地区の戦闘シーンのチェック。三班がフィールドのチェック後、D~E地区の戦闘チェックをしていきます」
シリーズものではないここ最近出した完全新作の中では一番と言っても過言ではないほど、〖scrap rat〗は全ての点に於いて拘りを持って作られていた。
まず原作でも最重要視していたキャラクタークリエイト。
これは、無駄に綺麗になったグラフィックにより目も当てられないくらいリアルになってしまうかと思われたねずみを卓越したデザインでカバーし、豊富なバリエーションを展開する事が出来た。
手足の長さや筋肉量脂肪量、表情やアクセサリー。
まず省かれるだろうなと思っていた肌の色の変更まで。
しかも、絶対に必要無いであろうピンクや青色も混じってる。
この要素は絶対に欠かせない。と〖scrap rat〗のデザイン部門長をやってくれている長田さんが力強く発言してくれた。
原作者としては商品の売り上げアップの為に省いてくれて良い要素でしかなかったけど、あの力強い目の前でそんな事は口が裂けても言えそうになかった。
それ以外にも勿論アクセサリーの要素もあって、サングラスを掛けたり帽子を被ったり、前歯をデコレーションしたり。
王道のものから不必要そうなものまで含めてアクセサリーだけで60種類存在する。
確実に、張り切り過ぎている。
付け爪なんてねずみに必要なのか。
キャラクタークエリエイトの熱の入りように比べたらフィールドの凝り具合なんてマシ、、、なんて事はなく、主な戦場となるゴミ捨て場や下水道だけでなく、そこに至るまでのマンホールや街並みなんかもある程度汚さを抑えてリアルに再現されている。
〖生存戦争〗のドットで綺麗とは程通い作りだった街並みとは雲泥の差だ。
フィールドだけ見ると、全く違うゲームのようにさえ思える。
カーブミラーや水溜まりに映ったねずみの姿を見て何のゲームだったか思い出させてくるのは絶対に熱狂的なファンの仕業だ。
それさえなければ、主人公が小さい人間である可能性も捨て置けずに見る事が出来るのに。
「やっぱ実際フィールドでやるといい感じっすね」
四班に視線を切り替えると、キャラクタークリエイトのチェックを終えて戦闘シーンに入っていた。
そう。
何といってもこのゲームで一番拘って試行錯誤を繰り返し時間がかかったのはこの部分だろう。
ねずみの動きをモーションキャプチャーで取り込むだけでは、武器を握ったり、必殺技を使ったり出来ない。
望むのは、ねずみと人間の間、もしくはそのどちらもの性質を持った動き。
開発当初から議論に議論を重ねて出た結論は、
〝四足歩行ではねずみらしい動きをして素早さが上がるけど口でしか攻撃が出来ない〟
〝二足歩行の時は武器も口も使えるけど移動速度が極端に下がり、人間っぽい動きにする〟という二段構えの構成だった。
武器の収納、歩行方法の切り替えは驚く程スムーズで、噛み付きや回避行動のアクションも人間が主役のゲームに引けを取らない迫力を持っている。
いや、もしかすると、、、。
周りの建物や物が大きい分、こっちのほうが迫力満点かもしれない。
無差別に攻撃してくる破壊不可モンスターの猫が、人型キャラでいうところの巨大な龍のような存在感をしている。
「三班チェックOKです」
「四班もOKです」
16:30。
全てのシーンに於けるチェックが無事終わった。
戦闘シーンには移行したものの本格的に戦闘する事はなく、ダメージゲージが問題なく作動しているかどうかや、バグが起きてないかといった簡単な流れだけのチェックだった。
本格的なものは明日から。
テストプレイをしてもらって、問題点が無いかを洗い出して修正していく。
問題が無ければそれで良し。
問題が見つかれば修正をして再チェック。
発売までその地道な繰り返し。
原作者でありゲーマーでもある俺も、テストプレイをする内の一人に選ばれている。
プレッシャーさえなければ、仕事中にゲームが出来るなんて最高だと、今頃喜んでたはずなのに。
問題点を見つけられるかどうかは分からないけど、誰よりも隅々まで見ながらプレイするという確信はある。
(胃が痛い、、)
完成度のあまりの高さに、改めて胃の痛みを強く認識した。
このゲームに会社の威信が掛かっているとさえ錯覚してしまう。
もう本当にこれ以上今日の間に出来る事はないだろうか。
仕事は終わっているのに定時を30分過ぎてもまだ何か出来ないかと必死に足掻いてみる。
今までも、何度もチェックしてやり残しややり忘れが無いように努めた。
それでもやっぱり気になってしまう。
旅行前の荷物チェックみたいに、何度でも同じ事を繰り返して不安になってしまう。
結局不必要な最終確認を繰り返して会社を出たのは18時前だった。
少し暗くなり始めた真夏の空が、自分の無駄を強調した。
「いただきます」
緊張とは裏腹に身体は正直で、張り詰めていた糸が緩んだ事で一日分の空腹が帰り道で一気に襲ってきた。
大きいサイズのカップ麺におにぎり二つとレジ横のホットスナック。
デザート二つにコーヒー牛乳まで。
まるで現実逃避するかのように贅沢な食卓に没頭した。
コンビニで一回分の食事を買うのに2000円も使うなんて前までだったら考えられなかった。
今日は緊張とか一旦の安心感とか色々が綯い交ぜになって、タガが外れてる気がする。
大して興味の無い昔少し見てただけのアニメの一番くじまで二回も引いてしまったし、今のままだと通販番組で初めて買い物をしてしまいそうだ。
〖ライブツアー「mirage」北海道公演ありがとうございました!!!〗
テレビを点けっぱなしにしながらご飯を食べ、SNSを流し見る。
ひと際目立っていて目に飛び込んできたのは推しであるシテの投稿だった。
姿を見せずに活動しているシテが、感謝の言葉と共に会場にあったフラワースタンドの写真を上げている。
数分前のその投稿には既に100を超えるコメントがついていて、投稿時間を何度も見直した。
行った人の感想コメントはまだ余韻に浸ってるのか少なく、圧倒的に行きたかったけどチケットが取れなかったというコメントが多かった。
数か月前。
偶然気付いて突発的にチケットの申し込みをして東京公演だけとはいえ無事に取る事が出来たのは奇跡的だったのかもしれない。
溢れかえる不運な人達のコメントを見るとそう思わせられる。
ライブツアー開催地である東京での公演は来週末。
二日間開催される内の二日目、千秋楽に行く事になっている。
千秋楽のチケットはより倍率が高いらしく、今でもSNSでは譲ってくれる人がいないか探すファン達で溢れている。
こんな必死な人達を差し置いて物見遊山な自分が行っていいんだろうかと思うけど、せっかくチケットを取る事が出来たんだ。全力で楽しもう。
グッズの事前通販は忙しくて申し込むのを忘れてしまって、来週末にライブに行く事の現実味を持たせてくれるのはチケットの当選メールだけだ。
穴が開きそうなくらいに隅々までサイトを見ても一週間前にならないと入場順が書かれたチケットが表示されないらしいし、本当に当選してるのか不安になってくる。
(大丈夫だよな、、、?)
まだ何も表示されてない電子チケットのアプリを開いては閉じてを繰り返す。
チケットサイトのページを見ていつ表示されるのかの確認をして、既にライブに行った人達のSNSも何件も確認した。
規模関係なくライブに行くのは初めてで、ライブ会場でのマナーや準備しておかないといけないものなんかも全く分からない。
衝動的に申し込んだからチケットは一枚だけだし、今からライブに詳しい人を探して一緒に行ってもらうわけにもいかない。
〖シテ 5,700件〗
SNSのトレンドにも、ライブの収容人数の倍以上の投稿をされたシテの名前が堂々ランクインしている。
ほとんどがライブの感想かチケットの譲渡についてのもの。
中にはこれまでのライブのセットリストをまとめて投稿している人もいて、俄かな自分でも知ってる曲ばかりだった事に安心感を覚えた。
「当日の服どうしようかな、、」
多くの人が、ライブの参戦服にシテのイメージカラーである赤を基調としたものを選んでいた。
赤なんて攻めた色の服、当然身だしなみに拘りなんてものは微塵もない一般会社員の俺には持ち合わせが無い。
フルカラーの時代にも拘わらず、クローゼットの中身はほとんどが黒の濃淡で表現出来る。
買いに行くとすれば今週末の休日。
意外にも外面がよく身だしなみに気を付けている安穏先輩に選んでもらうかそれとも自分の欠片くらいはありそうな目利きを信用するか。
初めてのライブに向けた不安や期待や色々で、明日へ向けた感情を誤魔化した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます