第8話 図書館のお姫様①
「今日も僕の家に来て勉強する?」
6限が終わり、昨日と同じように脳がショートになって机に突っ伏している久志の元に近づき、今日も僕の家で勉強をするかの確認を取ることにした。
「あ、悪い。今日は遠慮しておく」
「もう頭が限界?」
昨日も遅くまで勉強していたし、6時間も教卓の前で真面目に授業を受けていたからな。勉強が苦手な久志にはさぞ苦行なことだっただろう。
そんな状態であるから久志はもう勉強したくないという返答を予想していたのだが、久志の返答は違っていた。
「確かに頭はもう限界なんだが、理由は別だ」
「そうなの?」
「ああ、部活の方に顔を出してくれって言われたんだよ。テスト前だから本当は行きたくないけどさ、大会が近いからな」
久志は陸上部に所属している。エースとまではいかないものの、陸上部の中でも上位に入るほどの高い運動能力を持っていた。
大学では全く運動していなかった僕とは違い、久志は大学でも陸上部に所属し、日頃から体を動かしていた。
「そっか、それは部活の方を優先した方が良いね」
「悪いな、せっかく勉強教えてくれてるのに」
申し訳なさそうにする久志に頑張れよとだけ声を掛けて席に戻った。その大会で高い成績を修めれば推薦でいける大学も増えるだろうし、大会の方にも力を入れてもらうとしよう。
帰りのHRが終わり、久志を見送った後、僕は図書館へと向かうことにした。
本来の予定であれば今日の放課後も久志の勉強を見るつもりであったのだが、陸上部の呼び出しという思わぬ出来事が生じたため、暇が出来てしまった。
さっさと帰って勉強しても良いが、夕食を食べてからでも勉強できるし、せっかく高校生に戻ったのだから、図書館にでも行って楽しむことにした。
夕才高校の図書館は5階建てと広い。現役時代も何度も通っていたが、3年間だけでは全部読み切ることなど不可能なほどの量の本が置かれている。
この図書館では1度に5冊の本を3週間の期間借りることができる。手続きも学生証を提示するだけであるので、簡単に借りられる。
受付の隣には本を検索できる機械が置いているため、読みたい本があればここで検索することができる。
その機械は検索機能だけでなく、新刊情報やランキングも見ることも可能だ。新しく入荷した方があればこの機械を見ればすぐに分かるようになっていた。
特にこのランキング機能というのはとても興味深く、読みたい本が見つからないときには便利なものだ。
週別、月別、年別に貸し出された回数のランキングも見ることができるため、この高校に在学する生徒たちにどの本が人気なのかをすぐに知ることができる。
そのせいもあってか、大体上位10位内に連ねる本たちは予約をしなければ借りるのは非常に難しい。一番人気の本を読もうとしたら、半年以上先になることだってよくあることだ。
ただ、僕はその機械を使わずに1階から順番に本棚を眺めることにした。さっきの機械を使えば読みたい本なんて簡単に調べられると思うが、僕はこんな風に自分の目にふと留まった作品を読みたいと思っていた。
まずはタイトルで僕の感性に引っかかる作品を見つける。そのあとは、表紙やあらすじなどを見て読むかどうかを決める。
ランキングを参考にするのも良いのだが、今日の気分的には読んだことのないタイプの本を発掘するような気分だ。
フラフラとあの本は昔読んだな~と懐かしみながら歩いている時に、1冊の本が目に入った。タイトルからも面白そうだと感じ、ふと自然に手が伸びていた。
「「あっ」」
同じくその本を取ろうとしていたであろう女子生徒と手が重なる。
「すみません」
「こっちこそ、ごめん」
僕は気になっていた本を手に取り、そのまま女子生徒に手渡した。
「え、いいんですか?」
「ん? 何が?」
「いえ、てっきりあなたもこの本を読みたかったのかではないですか?」
であるならば受け取れないと、本をこちらに渡して来ようとしたので、僕は
「ううん、すでに借りたい本は5冊とも決まってて、今度借りに来た時に何を読もうかなって探してただけだから」
と、間髪入れずにそう言った。
実際は他に読みたい本など1冊も見つけてはいないのだが、こういえば相手も遠慮せずに借りることができるだろう。タイトルはしっかり覚えたし、返却された頃に借りに来ればいいからな。
「そうおっしゃるのであれば、遠慮なく受け取らせていただきますね」
僕の手から本を受け取った少女はクスクスと笑い出した。
「優しいお方なんですね」
本を譲ってもらえたことがよっぽど嬉しかっただろう。本を大事そうに抱えながらニコニコしている。
「申し遅れました。私は2年F組
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